崩れてしまった腸内細菌のバランスをもとの状態に戻したり、理想の状態に変えたりするのはなかなか容易なことではありません。そこで、崩れてしまった腸内細菌のバランスを整えるため、健康な人の腸内細菌を移植するという治療法「便移植(腸内フローラ移植、糞便微生物移植)」に期待が高まっています。

現在、微量の便の中の腸内細菌叢(腸内フローラ)を遺伝子解析し、腸内細菌のDNA情報を基にその人の細菌の種類や比率を明らかにできるようになりました。便移植の対象疾患は、世界中で検証が進められています。城谷医師をはじめ、腸内フローラ移植臨床研究会の医師たちは、便移植を治療法の1つとして行っています。その便移植についてもお話しを伺いました。

便移植(腸内フローラ移植)の進展

便移植は、健康なドナーから提供された便を精製し、患者さんの腸に移植するというものです(私たちの研究会で移植に使う便は、血液検査や便検査に加え、生活習慣や厳しい問診などアムステルダムプロトコルと呼ばれる基準を定期的にパスし続けているドナーのみを登録している便バンクから提供を受けています)。

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日本国内では大学病院を中心に内視鏡を使い、主に潰瘍性大腸炎などの腸疾患に対して研究が行われていますが、私たちの研究会では倫理委員会の承認のもと適応疾患を広げ、内視鏡を使わない方法を取り入れています。

今までにこの移植法で改善が見られた疾患には、過敏性腸症候群、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、自閉症などがあります。便移植は様々な可能性が期待できる治療法ではあるものの、まだ症例が少なくエビデンスレベルが高いわけではありませんので、その適応には慎重になるべきですし、今後さらなる研究が必要です。