「金正恩後」の北朝鮮を、妹・金与正は掌握できるのか

「特権層」という悩みのタネがある

「権力の空白」をうかがわせる動き

北朝鮮が金正恩朝鮮労働党委員長の公開活動を伝えなくなって2週間が過ぎた。金委員長は2014年秋に約40日間、姿を現さなかったことがあるが、このときは足首にできた腫瘍を取り除く手術の影響だったと言われている。今回も、死亡から始まって脳死、植物人間、足首治療、新型コロナウイルスからの隔離、静養など様々な説が乱舞している。

このうち、「金正恩健在」を最も強く主張しているのが韓国政府だ。

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韓国大統領府などは、金正恩氏が東部の江原道(カンウォンド)元山(ウォンサン)の別荘に滞在し、幹部たちと通常の活動を行っていると繰り返し説明している。

この主張はおそらく、米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」が25日に公開した衛星写真などを根拠にしているのだろう。写真には、正恩氏専用とみられる列車が元山駅に停車している様子が写っていた。列車が元山を拠点に移動している様子を根拠に、「地方で現地指導を繰り返している」と判断しているとみられる。

ただ、専用列車が動いているからといって、正恩氏が健在ということにはならない。米韓などに「権力の空白」をつけ込まれないための偽装工作の可能性が高い。少なくとも、通常の執務をこなせない状況であることは間違いなさそうだ。

平壌と連絡を取る高位脱北者によれば、北朝鮮の党や政府機関内で最近、「親筆の入った1号提議書」が出回らなくなった。

1号提議書とは、最高指導者の決裁を仰ぐための書類を意味する。最高指導者が提議書の内容に同意する場合はサインをし、不同意の場合はサインをしない。そして提議書に非常に満足したときや改めて具体的な指示を加え得るときは、そこに親筆を添えて戻していた。サインした提議書まで見られなくなったのかどうかは不明だが、少なくとも親筆入りの提議書は4月半ば以降、各機関に降りてきていないという。