「にわか業者」が大量参入…中国「マスク・バブル」の驚くべき実態

1月以降に新規参入が9000社も
北村 豊 プロフィール

便乗、粗製濫造、共倒れ

ところで、中国政府国務院の新設組織である「新型コロナウイルス感染対策共同予防・抑制メカニズム」が4月5日に記者会見を行ったが、その際に判明したマスク関連事項は以下の通り。

a)4月4日までに54の国・地域および3つの国際組織が中国企業と医療物資の購入契約を締結しており、それ以外に74の国・地域および10の国際組織が中国企業と医療物資の購入商談を行っている。なお、3月1日から4月4日までに海外へ輸出されたマスクの数量は約38.6億枚であった。

b)中国税関の統計によれば、3月1日から4月4日までに全国から輸出された新型コロナウイルス感染予防・抑制物資の総額は102億元(約1632億円)であり、その主要品目は以下の通り。
マスク:約38.6億枚、77.2億元(約1235億円)
防護服:3752万着、9.1億元(約146億円)
赤外線体温計:241万個、3.3億元(約53億円)
呼吸器:1.6万台、3.1億元(約50億円)

c)マスクをEUや米国へ輸出するにはそれぞれCE認証、FDA認証を取得することが必要だが、現状では中国企業の多くは申請方法も申請先すら知らないのが現状であり、中国政府「市場監督管理総局」や「中国国家認証認可監督管理委員会」は様々な方法で啓蒙・指南に努めている。

中国のマスク企業の多くは、マスクをEUや米国へ輸出するにはCE認証やFDA認証が必要であることすら知らないというのに、上述のように約38.6億枚ものマスクが輸出されている。そればかりか、EUの国々からは中国製マスクの品質に対して不信感が高まっているのが実情である。

それではCE認証もFDA認証も知らないマスク企業はどうやってEUや米国へマスクを輸出しているのだろうか。マスクの品不足を理由にEU諸国がCE認証に目をつぶった可能性、あるいは中国がCE認証の取得を偽ったことも考えられる。そうであるならば、どの程度の品質のマスクがEU諸国へ輸出されたか想像できるというものである。

4月6日に中国のウェブサイト「Tech星球」は、マスク輸出に携わってる商人の発言を次のように報じた。即ち、中国のマスク工場の60%には医療用品製造に必要不可欠な「無菌車間(クリーン作業所)」は存在せず、その大部分はマスクの製造設備を買い入れたら即座に生産を開始している。そればかりか、そうしたマスク工場の内部は埃まみれであるばかりか、工員はマスクも手袋もしておらず、生産したマスクを直接手で触っている。

中国の某ネットユーザーがマイクロブログに書き込んだところによれば、彼は3月17日に河南省滑県の「奥康衛生材料有限公司」(以下「奥康公司」)から輸出用のマスクを35万枚購入した。奥康公司から契約前に提供されたマスクのサンプルは文句のない良品であったが、何分にも購入数量が大きいので抜き取り検査を実施したところ、ハエの死骸が付着したマスク、耳に掛ける紐に黒いシミがあるマスク、さらには全体に無数の黒い汚れがあるマスクなどが見つかったという。

そこで彼は奥康公司に問題の解決を要求したが、マスクが売手市場であることが影響してか、奥康公司が回収に応じたのはわずか1.3万枚に過ぎず、それ以上はらちが明かなかったので、彼は35万枚の大部分をアマゾン経由で全世界の買手へ売り尽くしたという。

中国ではマスクが儲かるとなると、マスク製造業界に新規参入者が殺到し、金儲けだけを目的に粗製乱造を行い、それが輸出されれば、中国製マスクの評判を落とし、信用を失うことになる。これがさらに進むと中国のマスク製造業界は共倒れとなるのだが、この現象は中国の産業界における不変の原理という事ができるのではないだろうか。

文頭でマスクの中国語は「口罩」で、漢字の意味から言う「口覆い」あるいは「口カバー」という事になると述べた。

マスクで口を覆って目だけ出している状態では善人に見えて、マスクの粗製乱造を行っているようには思えないだろうが、マスクを外した瞬間に世界的な武漢肺炎の蔓延に便乗して、これ幸いとマスクの粗製乱造で金儲けに走る中国のマスク関連業者の醜悪な姿がさらけ出されることになる。

 

それは中国という国家の信用を貶(おとし)めることになるのだが、たとえ中国がマスクで「口覆い」して善人面したとしても、中国という国家が新型コロナウイルスの発生源であるという事実を否定することはできないのである。