「にわか業者」が大量参入…中国「マスク・バブル」の驚くべき実態

1月以降に新規参入が9000社も
北村 豊 プロフィール

中国のマスク・バブル

2003年にSARSが発生した際にはマスクの需要は限定的であったが、今回の武漢肺炎が蔓延するとマスクの需要は飛躍的に伸びた。この結果、マスクは中国国内でも品不足の様相を呈したことから、中国政府はマスクの輸出を規制したが、そこには海外から受注を受けた大量のマスクまで含まれていたのであった。

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ところで、経済ウェブサイトの「一本財経」は3月20日付で『百万人以上がマスクの生産に流入、武漢肺炎の終息後にはどうなるのか』と題する記事で下記のように報じた。

1) 中国の産業チェーンの中で最もホットなのは「マスク製造(口罩製造)」の産業チェーンであり、過去数カ月においては「生産能力の削減」・「在庫の削減」が必要とされた業界だったが、今では意外にも安定した利益を産み出すようになった。

2)中国企業の情報検索サイトを運営する「天眼査」のデータによれば、2020年3月18日までの時点で、中国には営業品目に「マスク(口罩)」を含み正常に経営されている企業は4.7万社あるが、そのうちの8950社は新型コロナウイルスによる武漢肺炎の蔓延が始まった1月25日以降に新たに増えた企業である。これら新規参入企業は主として江蘇省、浙江省、広東省の3地区に集中している。

3)業界関係者の推定によれば、1月25日からの約2カ月間に100万人以上がマスク業界に流入しており、中国におけるマスクの1日当たりの平均生産量は控えめに見積もっても2億枚に達していると考えられる。たとえば、ある工場が日産50万枚のマスクを生産するとして、マスク1枚当たりの原価が1元で、売価が3元なら、利益は2元となるが、
日産50万枚なら1日の利益は100万元(約1600万円)で、月30日操業なら1カ月の利益は3000万元(約4億8000万円)となり、この上ないぼろ儲けとなる。

4)2020年の2月末まではマスクの販売先は国内だったが、3月に入ると新型コロナウイルスによる武漢肺炎は世界的規模で蔓延するようになり、世界中でマスク在庫が逼迫(ひっぱく)し、マスクの需要が急増した。上述した「天眼査」によれば、3月1日から3月20日までのわずか20日間でマスクを営業品目に含み正常に経営されている新参入企業は全部で5695社に達したという。即ち、マスク生産に新規に参入した企業の60%は3月に設立されたのである。

5)中国政府「国家発展改革委員会」が発表したところによれば、2月29日までの統計で、普通マスク、医療用使い捨てマスク、医療用N95マスク<NIOSH(米国労働安全衛生研究所)規格に合格したマスク>を含む中国国内のマスク生産量は1日当たり1億1600万枚であった。但し、中国政府によるマスクの徴用(ちょうよう)を恐れるマスク工場は、日産20万枚なら10万枚と過小申告したので、実際の日産数はもっと多かったはずである。これに3月に新規参入した企業の生産量を加えると、中国のマスク生産量は控えめに見積もっても日産2億枚を超えているものと考えられる。

 

6)海外でマスク需要が増大したと言っても、マスクの輸出には、EU向けなら「CEマーク(全てのEU加盟国の基準に適合することを示すマーク)認証」が必要だし、米国向けなら「FDA(アメリカ食品医薬品局)認証」が必要などの各種条件をクリアーすることが要求される。マスクは中国国内では利益が見込めても、海外の市場は不透明なので、進んで海外への輸出に取り組もうとはしていなかった。ただし、3月になるとマスク製造の人件費、材料、設備が大幅に値上りし、各企業ともに国内市場だけでは身動き取れなくなり、輸出へと転身を図るようになった。そればかりか、マスクに及び腰だった欧米諸国を始めとする諸外国がマスクの有用性を認めたことで、マスクに対する需要が大幅に伸びたのだった。