現在進行中のがん治療をどう進めていのか

では今、実際にがんの医療現場はどのような状況になっているのだろうか?

「患者団体で話を伺っていると、通院でご自身が感染してしまうのではないか。このまま外来の経過観察や治療続けて大丈夫なのかという不安の声が大きい。ここ1~2週間くらいはいろいろな治療が延期になったという声も届いている」と天野氏はいう。

実際に、医療スタッフの感染が分かり院内感染を防ぐために、日本で一番患者数の多いがんの専門病院では、一時的に手術が8割減になるなど、治療に延期になるケースは増えると聞く。私の知人は、手術を延期し飲み薬による別の治療を先に行うと説明を受けたと話してくれた。

治療中のがん患者にとって、もっとも不安である、「延期した治療はいつまで待てばいいのか」という質問に新型コロナウイルスの感染症治療の最前線にいる国立国際医療研究センター病院国際感染症センター センター長の大曲貴夫医師は「その答えはないのです」という。

通院のために外出すると感染リスクはやはり高まる可能性はあるという。しかも、病院にはコロナに感染した患者さんもたくさんいて、いろいろな意味で感染症以外の治療がやりにくくなっているという。これが感染症患者を受け入れる病院の現実だ。

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治療を中止・延期する「基準」とは

がん治療を中止、延期にする人としない人は何を基準に判断しているのかという質問に対して、大須賀医師は、以下の2つのリスクを上げた。

◆十分なベッド数や人工呼吸器、人員など医療資源が足りず、安全に治療が行えない。
◆がん治療実施により患者の感染リスクが上がる。

「公共機関を使って移動することで人と接触する機会が増える。治療により免疫が下がることを考慮し、患者さんは陽性者がいる場所に行き接触する機会が増えてしまうという点で、病院を受診することはリスクを高くしてしまうと考えられています。そういったことから、今すぐの必要性が高くない治療を延期にするケースも考えられます。これらは、治療の必要性や緊急性がどれくらいかを考えて判断します。そして、判断は主治医でなければできないことだと思います」(大須賀先生)

ただ、治療が伸びれば「がんが進行してしまうのでは」と不安は募ってしまう。上野医師は「患者は、主治医に延期や中止の理由を聞き、納得することが大切」とアドバイスする。それほど緊急ではないということが理解できれば、患者の不安も軽くなるはずだ。

患者から、発熱などの不調が出たらどうすべきか、という質問も集まった。
がん治療中に発熱など不調が出た場合は、(副作用か感染か)患者さんが判断するのは不可能で、保健所などではなく、現在治療している主治医に連絡すること。患者の治療や身体症状を一番知っているのは主治医だからです」と佐々木医師はアドバイスした。

手術なども延期になる可能性も。主治医とまずは話をすることが必要だ。photo/iStock