新型コロナウイルス感染拡大の中、『感染症対人類の世界史』(ポプラ新書)が緊急出版された。
そこで語られているのは、人類が感染症と戦って来た世界史。「生きる希望は歴史の中にあり」とふたりがあとがきで伝えているように、今目の前のことにどう対応したらよいのかのヒントに溢れている。
5月1日に発売された本書より抜粋掲載する第2弾は、「コロナウイルス」でもあるSARS、MERSとの人類の戦いを中心に特別に編集して、一部抜粋する。
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感染症は人類全体の敵
増田 新型コロナウイルスによる混乱を見ていると、また新しい感染症に襲われたら今後どんな事態になるかわかりませんね。
池上 感染症というのは本当に予測がつかない事態を引き起こします。日本だって他所の国からすれば、リスクがあります。2014年、東京の代々木公園を中心に日本国内でデング熱にかかった人が大勢出ました。代々木公園は封鎖され、消毒して蚊の駆除作業をしていました。
増田 よく報道されていたので覚えている方も多いと思います。
池上 本来、デング熱は東南アジアやアフリカ、中南米などの熱帯・亜熱帯地域で蚊が媒介してかかるものです。なんらかの形で日本へ持ち込まれた蚊が繁殖したのか、海外で蚊に刺されて日本に来て(あるいは戻ってきて)、その人を日本にいる蚊が刺して、さらに別の人を刺して媒介したのか、原因はわかりません。流行した前年の2013年には、ドイツから日本にやってきた人が、ドイツへ帰国後にデング熱を発症しています。日本以外には立ち寄らなかったそうです。
増田 その人は、どうして日本でデング熱なんかにかかるのかと思ったでしょうね。