日本はいま「生産性が低い」ことが議論の俎上に載せられることが多くなっています。
生産性を上げることが日本の経済力に資することは明白ではありますが、ではどの程度、上げていくことが日本にとっていいのかという議論はおざなりにされています。
いいとこ取りの「生産性改革」はむしろ日本に害をもたらすというのが、実は私の主張です。今回はそんな「生産性改革」の表と裏を見ていきましょう。
2月26日付の連載記事(『サラリーマン消滅時代、日本で「低スキル・低賃金」の人が急増する!』)では、生産性を上げると同時に格差をなくす手法として、低スキルゆえに低賃金に甘んじているすべての人々を対象としたスキルアップ教育の重要性について申し上げました。
ところが実際には、小売・飲食・宿泊などのサービス業の現場だけではなく、経済のデジタル化であおりを受けている大企業にも、スキルアップが欠かせない人々が大勢います。
日本の大企業はバブル期の大量採用などで中高年社員の層は厚いので、50歳を過ぎても管理職になれない人材がこれまで以上に増えてきています。日本の企業は終身雇用が常識となっているので、スキルが通用しなくなった社員をそのまま抱え込むしか選択肢はありません。
そのようなわけで、日本企業の国際競争力低下の原因は、ホワイトカラーを中心に大量の余剰人員を抱えているということにあります。
しかし、ITやAIを活用した経済のデジタル化の進展によって余剰人員が増える見込みにあるため、余剰人員の問題がいよいよ日本企業の経営を揺り動かす懸念要因として浮上しています。