感染拡大倍率と政策評価
いまだに収束の見通しがたっていない国内の新型コロナウイルス感染。死亡者数などは他の感染拡大国に比べ圧倒的に少ないものの、3月中旬以降、感染者数は急上昇、集団感染(クラスター)を押さえ込めなくなっており、感染経路も捕捉不能な例が急増している。
医療現場では、大都市を中心に対応能力を超える状況が広がっており、欧米で起きている医療崩壊も現実の脅威となってきた。
果たして日本の新型コロナウイルス対策は機能しているのか、はたまた破綻してしまっているのか。具体的な対策と感染拡大の推移を追いながら、問題の所在を探ってみる。
まず何より、感染拡大の状況の捕捉をどうやって行うか。そもそも日本政府や都道府県発表の「感染者数」は、国民一律に検査の網をかけたものではなく、37.5度以上の発熱など、症状が現れた患者にPCR検査を行い、陽性反応が出た者の数。感染したが発症しなかった例は含まれていない。
そこでこれは「実数」ではなく、一定の基準で選ばれた「サンプル数」と見て、その増加率を追うことで対策の効果を判断出来ると考えた。増加数ではなく増加率を指標に採ったのは、感染拡大は幾何級数的、つまりねずみ算式に起こるので、増加率が感染拡大のスピードを表すことになる。
また、新型コロナウイルスの潜伏期間が最大14日、平均5.8日(日本感染症学会)とされることから、6日後の発表感染者数増加率が、その時点の感染状況を反映しているとする。
その結果が、次のグラフである。

そして、日本の新型コロナウイルス対策は、政府の新型コロナウイルス対策本部が2月23日に公表した図に示された「ピークカット戦略」で表される。

つまり、1)感染の国内侵入を遅らせる、2)集団発生を防ぎ感染の拡大を抑制、3)感染のピークを遅らせ、引き下げ、4)その間に並行して医療体制の強化を行い、医療崩壊を阻止する、となる。
しかし、現実には大都市で医療現場の対応能力を超える事態が起き始めている。この戦略に問題があったのか、それとも、その運用に問題があったのか。