コロナにも? 自然素材石けんは合成洗剤の「1000倍のウイルス破壊力」

天然由来成分に驚きの効果を発見
山根 一眞 プロフィール

秋葉さんは高分子材料化学、界面活性剤に取り組んできた研究者で、北九州市立大学副学長でもあった國武豊喜さんの薫陶を受けてきた1人だ。

その師、國武豊喜さん(現・九州大学特別主幹教授)は、世界で初めて脂質二重膜の合成に成功。それは、人工的に細胞を作ることにつがなる偉業だった。

私も長年にわたり國武さんとは懇意にさせていただいてきた。

1997年には、國武さんと対談し「不可能とされた人工細胞膜を洗髪リンスで実現」という記事を書いているが(『文庫版 メタルカラーの時代8 役者揃いの北九州メタル都市』小学館に収載)、國武さんはその業績により毎年、必ずノーベル賞候補として名があがっている。

北九州市は石けんという界面活性剤製品のメーカー、シャボン玉石けんが立地していると同時に、界面活性剤の科学では世界のトップ水準の地なのである。

では、チームは界面活性剤とウイルスの相互作用をどう解きほぐしたのか。

坂口 秋葉さんらは、自然素材無添加石けんの界面活性剤、「オレイン酸カリウム(C18:1)」は、ウイルスと「静電的相互作用」していると結論づけています。

インフルエンザウイルスは、表面に突き出ている棘(スパイク)が正常細胞(肺胞細胞や気管支の細胞)に取りついて侵入(感染)します。そのスパイクは、ヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という2種のタンパクで構成されています。

これまでの研究で、インフルエンザウイルスの表面のHAタンパクは、プラスの電荷をもった部分があることがわかっていました。一方、オレイン酸カリウム(C18:1)の親水基はマイナスの電荷を持っています。

そのため、そのマイナスがウイルスのHAのプラスに引き寄せられ取りついているのでは、と、考えたんです。

洗濯と同じことが起こり、さらに…

整理するとこうなる。

界面活性剤の細長い分子は、頭の部分が「親水基」、長い尾の部分が「疎水基」という2つのパートからなる。

「親水基」は水になじみやすく、「疎水基」は水をはじき油にとりつく。

脂がしみついた布を水に浸し界面活性剤(洗剤)を加えると、たくさんの界面活性剤の分子は、尾の「疎水基」部分が吸い付けられるように汚れである脂を取り囲み「ミセル」(分子の塊)を作る。

一方、界面活性剤の分子の頭は「親水基」なので、脂をはじき、水に強く引き寄せられる。

こうして脂を取り囲んだ「ミセル」は布から引き剥がされて水の中へと拡散する。
これが、脂汚れが洗剤できれいになる洗濯の原理だ。

ウイルスの表面でも洗濯と同じことが起こっている。先に紹介した動画、「Fighting Coronavirus with Soap」(石鹸でコロナウイルスと戦う)は、その説明だった。

だが、広島大学と北九州市のチームは、ウイルスに対しては洗濯とは異なる反応も起こっていることを見出した。

秋葉さんらは、界面活性剤がウイルスの細胞攻撃の武器である「棘(スパイク)」を構成するHAとNAという2種のタンパクをどう攻撃するのかを探った。

[C18:1]は親水基がウイルスのHAに静電的相互作用によってとりつき、スパイクを引き抜くが、[LES]は疎水基がエンベロープに化学反応でとりつく。ウイルスに対する攻撃力は[C18:1]がはるかに大きい 拡大画像表示

だが、そんなことを知る方法があるのだろうか。