休校要請直後に一斉メール

フランスの全学校に休校措置が取られたのは、日本で一斉休校が開始されてから2週間後の3月16日(月)のことだった。保育園はもちろん、幼稚園、小中高、大学に至るまで、医療関係者以外には公私を問わず、学びの場の門はパタリと閉ざされ、約1200万人の子どもたちが家で過ごすことになった。

3月12日(木)の夕方、大統領によって突然の休校措置が知らされると、国民教育・青少年省のブランケ大臣は「教育は続ける」、「フランスは遠隔授業の用意ができている」と語った。また、インターネットやパソコンを持たない約5%の生徒に対しては他の手段を見つけるとも語った。

日本では休校措置からずっと公立校での遠隔授業は行なわれず、保護者の間から批判が殺到しているようだ。そういう意味では、フランスはとても用意周到で、13日には一斉メールが送られ、16日からはオンライン授業が始まった。しかし、休校からひと月経った今、「むしろオンライン授業はやめたほうがいい」という意見が出ているのだ。ある意味では日本と真逆の議論は、どのようにして起きたのかをお伝えしよう。

下野さんは小学生と保育園に通うお子さんがいる。感染拡大しているイタリアからの帰国者が平気で登校している姿を目の当たりにし、2月末日から自主休校を選んだ 写真提供/下野真緒

パンデミック以前から、
フランスの遠隔授業は着々と準備されていた

この時語られた遠隔授業の筆頭に上がったのが、CNED(フランス国立遠隔教育センター)の存在だった。当機関は1939年に設立された、フランス教育省が管轄する正真正銘の「公立教育施設」で、外国語資格や国家資格取得などの通信講座が受けられる。その数はゆうに250を越える。

実は1月末の時点で既に、パンデミックを想定した遠隔授業の準備を水面下で始めていたというから、準備の良さには脱帽だ。そしてこの予測は見事的中し、教育省お墨付きの遠隔授業の出番となったのだ。

 

CNEDは通常有料申し込みだが、今回の休校措置で子どもの学年と名前を登録すれば誰もが該当する学年のソースにアクセスできるようになった。CNEDでは、練習問題(PDFファイル)や電子本での読書を提供するほか、教師が子どもたちの各パソコンと接続してオンライン授業を行なえるプラットフォームも用意している。サーバーへの負荷もあらかじめ綿密にテストされており、同時に1500万人までのアクセスを保障した。ここまでは用意周到だ。

ただ結局、CNEDへのアクセスは各家庭の裁量によるところが大きく、小学生ではその使用がまばらになるのは想像できる。親が教育熱心ならば親のパソコンやタブレットを譲り渡すが、テレワークをしている親はそうもいかないだろう。よくできたツールでも、致命的だったのは、この時点でタブレットのない家庭への配布までできなかったことだ(4月24日現在、配布が検討されている)。

また、公立小学校の教師達の間では、CNEDの提供する各週毎の授業カリキュラムの内容が、実際の教育現場で行なわれている授業のレベルを上回っていると判断されたという。膨大なドリルをはじめとする、3時間で終わる内容だとされるが、一人で難なく勉強できる生徒ばかりでもないだろう。「実際の学校での授業の代わりにはならないが」、と教育省も前置きをしていたものの、実際教師が教育現場で取り組んでいるように、学力の個人差を埋める試みまではできない。日本の仕組みでいうならば、「一定以上の学力の子どもが集まる塾で出される宿題」のように感じた。