インフルエンザの「かかりやすさ」その差は唾液にあった

「上気道バリア機能」の秘密【PR】
堀川 晃菜 プロフィール

また血液中のIgG抗体も、ウイルスに対する感染防御に効果の高い抗体として知られている。現在の注射型ワクチンは、主にIgG抗体を誘導するもので、血中から気道粘膜にしみでる抗体により感染が抑制されると考えられている。しかし、現行ワクチンでは分泌型IgA抗体を誘導できないため、感染の防御には限界がある。(※5)

【図6】粘膜上皮細胞においてインフルエンザの感染防御に関わる免疫細胞・免疫物質の例

こうした免疫機能の活性化を図るアプローチは、世界中で盛んに研究が続けられており、免疫のバリア機能に対する人々の関心も高い。

だができれば、免疫部隊の出番を必要とする前に、もう一つ手前の段階で何かできないか。そう考えたのが花王の研究チームだった。

「免疫機能を高めることは非常に重要です。しかし、免疫に加えて何かできないか?と考えました。そこで粘膜上皮細胞にウイルスが到達するか、しないか、その瀬戸際に注目しました。それが『上記道粘膜上皮バリア機能』(以下、『上気道バリア機能』)です」と山本氏は話す。

「上気道バリア機能」とは唾液、粘液、繊毛における一連の生理機能を指している。たとえば、気管支に入り込んだウイルスなどの異物は、粘膜上皮細胞から分泌される粘液にキャッチされ、繊毛運動によって排出されることが知られている。ただし繊毛には寒さと乾燥に弱いという残念な弱点もある。

【図7】ウイルス感染から粘膜上皮細胞を効果的・持続的に防ぐ「上気道バリア機能」に注目

また、プロジェクトの開始当初(2015年頃)は、世界的にみても「上気道バリア機能」とインフルエンザのような上気道の感染症との関連についての学術論文は少なく、一般的にそれらは体を守る働きがあると言われているものの、その重要性を裏付けるデータが十分にあるとは言えなかった。

しかし、その中でも例外があった。唾液である。唾液に含まれる複数の成分がインフルエンザウイルスの防御に寄与する可能性(※6)を含め、いくつか報告があったため、山本氏らは、唾液に焦点を絞って研究を進めることにした。

唾液が少ないとかかりやすい?

具体的には、まず唾液の量を調べた。前出の「かかりにくい人」「かかりやすい人」(計99名)から、安静にした状態で唾液を採取。2分ごとに5回、唾液を採取し、全体の重量を比較した。