インフルエンザの「かかりやすさ」その差は唾液にあった

「上気道バリア機能」の秘密【PR】
堀川 晃菜 プロフィール

ここでは「過去1年間に一度も風邪にかからず、過去3年間にインフルエンザにもかかっておらず、なおかつ感染症にかかりにくい自覚がある人」を「かかりにくい人」とし、反対に「過去1年間に3回以上風邪をひき、過去3年間に2回以上インフルエンザにかかり、なおかつ感染症にかかりやすい自覚がある人」を「かかりやすい人」とする基準を設けた。

その結果、「かかりにくい」に該当する人は、33%(6491人)、「かかりやすい」に該当する人は2%(405人)、どちらの条件にも該当しない中間層が65%を占めた。

図1と図2の調査は、この大規模調査で抽出された99人(前出の33%と2%に該当する人から選抜)を対象に実施し、前出の「インフルエンザにかかりやすい人(群)には、かかりにくい人に比べて予防を多く行っている人が多い」というのは、予防行動について詳しいヒアリングを行った結果だ。

繰り返しになるが、既存の予防法を否定するものではないことは重ねて強調しておきたい。厚生労働省やアメリカ疾病管理センター(CDC)が科学的な根拠があるものとして、ワクチンの接種、手洗い、咳エチケット(咳やくしゃみをする際に、マスクやティッシュ・ハンカチ、袖を使って、口や鼻をおさえること)を推奨している。

また、インフルエンザのワクチンについては「重症化を防ぐ」意味合いが大きいこと(※2)、うがいによる予防効果はインフルエンザについては科学的に証明されていないこと(※3)も追記しておきたい。

減る傾向にない患者数

さて、これだけ気をつけていても、依然としてインフルエンザが大きな脅威であることに変わりはない。

厚生労働省によると、季節性インフルエンザの国内感染者数は年間で約1000万人と推定され、10人に1人が感染するといわれている。その数はいっこうに減る傾向にない。

【図4】2009~2019年における季節性インフルエンザの推定患者数(出典:薬局サーベイランス ※4)

こうした現状を前に立ち上がったのが、花王の研究者集団だ……! と言いたいところなのだが、最初はほんの数人の小さなチームだったという。そもそも「トイレタリーメーカーが、なぜインフルエンザ?」と不思議に思う人もいるかもしれない。

「もともと花王には、清潔・美・健康・環境という大きく4つの研究領域があります。その中間領域に、まだ取り組むべき課題があるのではないかということで、清潔と健康の間にある『衛生』領域に着眼することになりました。

私は当時、ヘルスケア食品研究所に所属していたのですが、生物科学研究所、パーソナルヘルスケア研究所、それから事業部の人たちと一緒にアイディアを出し合っていく中で、公衆衛生の大きな問題であるインフルエンザに対して、独自のアプローチができないかという話になりました」(山本氏)

こうしてプロジェクトが始動したのが2015年。この時点では「抗インフルエンザ性」を示す有効成分の手がかりは、まったくと言っていいほどなかった。

インフルエンザのかかりやすさに「個人差がある」といっても、あまりにも漠然としているが、その所以をどのように解明していったのか。

「かかりやすい人」「かかりにくい人」の差とは

研究チームが注目したのは「感染が成立するまで」の過程だ。

インフルエンザは接触感染、飛沫感染、さらには空気感染が成立する。ウイルスとの接触を回避するのは、ほぼ不可能だろう。ならば、どうにか感染を瀬戸際でくい止めることはできないか。

「感染」とは、口や鼻、あるいは目の粘膜から体内に侵入したウイルスが細胞の中で増殖する状態を指す。主戦場となるのは「上気道」(鼻から鼻腔、副鼻腔、咽頭、喉頭まで)の粘膜だ。

【図5】インフルエンザの感染経路

当然、我々の体もみすみす敵の侵入を許しているわけではない。たとえば、唾液や鼻汁などに多く含まれる分泌型IgA(secretory immunoglobulin A; SIgA)は、粘膜免疫で中心的な役割を果たしている抗体だ。