こんなに大変だとは...若手研究者が一般書執筆で味わった苦悩

系外惑星の研究と執筆のはざまで
成田 憲保 プロフィール

実際に研究を優先すると、空いている時間を作ることはほとんどできなかった。そして2016年6月には長男が生まれ、空いている時間はさらに少なくなってしまった。

書かねば書かねばと思いつつ時間は過ぎ、正直なところ2017年12月まで、原稿はほとんど白紙だった。

第二の苦悩「執筆がまったく進まない」

2回目の危機は、その頃に編集者から脱稿の見通しを聞かれた時である。研究は忙しく(良い意味で言えば研究が進んでいて)、子供も小さいので、同じペースでは何年かけても書き終わる見通しが立たなかった。

 

もう諦めてしまおうという考えもよぎった。その危機を救ってくれたのは、私が書いた本を読みたいという妻の言葉だった。そこで状況を説明しつつ、やはり書きたいという旨を編集部に伝え、認めていただいた。

それからは平日や出張中は研究に集中し、休みの日に本書の執筆の優先度を上げて取り組むことにした。結局、2018年と2019年の土日や長期休暇の多くを執筆に費やした。

執筆にかかった時間はとても長く、その間の系外惑星研究の進展はとても早かった。新発見があったかと思えば、書いているうちにさらに新しい発見があって、それまでの原稿を泣く泣く書き直すということが何度もあった。

子供と遊ぶことができない日が増えつつも執筆を続けられたのは、家族の協力があったおかげである。

ほとんど白紙状態だった2017年末から約2年をかけて、2019年末にひととおりの文章を書き終えることができた。しかしそこで終わりではなく、編集者やデザイナーの協力をいただいて、出版直前の2020年3月上旬まで文章や図の確認・修正をさせていただいた。

そして、幸いなことに佐藤勝彦先生からのご推薦もいただくことができ、ようやく本書は完成した。

2020年3月中旬に本書が刷り上がり、両親と家族に贈った。どちらも喜んでくれたことで、苦労しても諦めずに執筆して良かったという余韻がある。

そして私は、この2020年4月に東京大学先進科学研究機構の教授に着任した。幸いなことに当初の不安は的中せず、ようやく定年まで勤められる研究者になれた。研究と執筆の両立は大変だったが、これも自分を成長させる糧となったと思う。

生命を育む惑星を探す研究は、これから10年、20年と続いて行く。また苦労しても、いつかこの本の続きを書きたい。

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