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こんなに大変だとは...若手研究者が一般書執筆で味わった苦悩

系外惑星の研究と執筆のはざまで
講談社ブルーバックスより初の一般向け著書『地球は特別な惑星か?』を上梓した東京大学教授・成田憲保氏の特別寄稿。

執筆の速度以上に研究が早く進む「系外惑星」の世界を、両親、妻、生まれてくるわが子に本の形で届けることはできたのか──。

第一の苦悩「不安定な身分で書いていいのか」

本を一冊書く。それが大変な作業だろうとは予想していたものの、拙書『地球は特別な惑星か? 地球外生命に迫る系外惑星の科学』(講談社ブルーバックス)が出版されるまでに、まさか4年以上もかかるとは思っていなかった。

実はこの間に、「執筆するのはやめよう」という決断を下しそうになった危機が2回あった。本稿ではこの4年余りの間に起こった出来事を振り返ってみたい。

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本書の企画を提案していただいたのは、2015年11月のことだった。当時私は特任助教と呼ばれる任期付きの研究者で、その任期も残り1年余りとなってきた時期だった。

1回目の危機の原因は、不安定な身分で一冊の本を書くことを引き受けて良いのかという葛藤だった。

ブルーバックスでは、当時まだ系外惑星を主題として取り扱った本がなかった。その最初の執筆を提案していただいたのは大変光栄だが、30代半ばの任期付きの身分で引き受けることには抵抗があった。

研究がおろそかになって、将来良い研究教育職を得られなくなるのではないか、という大きな不安があったためである。

こうした不安を押しのけて私が本書を書こうと決心した理由の一つは、職場からの帰りのバスでたまたま一緒になった国立天文台の渡部潤一先生に、「書いてみるといいよ」と勧められたことだった。

 

実は、渡部先生も20年ほど前、30代半ばで一般向けの本を執筆されていた。もちろんその頃とは若手研究者の状況も違うだろう。しかし、この言葉がきっかけで自分もやってみようという勇気をいただいた。

そしてもう一つの理由は、私が小学生の頃に佐藤勝彦先生の本などを買い与えて宇宙や科学への興味のきっかけをくれた両親や、生まれてくる我が子にも自分の書いた本を届けたいと思ったからである。

そこでまず、「必ず研究を優先し、空いている時間に書く」ということを決心した。そして全体の目次構成を考え、2016年2月に本書の企画が認められ、執筆を始めることになった。

しかし、私の見込みは甘かった。