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槙原寛己「完全試合」のウラで、広島先発・川口和久は何を思ったか

26年前に起きた“悪夢”の舞台裏

「ドームは好きじゃなかった」

時代劇において斬り役の主人公は覚えていても、斬られ役の名前まで覚えていることはほとんどありません。それはプロ野球の試合においても同じことが言えます。

1994年5月18日、福岡ドーム(現・福岡ペイペイドーム)。対広島戦で巨人の槙原寛己さんがプロ野球史上15人目の完全試合を達成したことは、つい昨日の出来事のように思い出されます。現時点で、槙原さんはプロ野球史上最後の完全試合達成者でもあります。スコアは6対0。完全無欠の102球でした。

では、この試合の斬られ役、すなわち広島の先発ピッチャーは誰だったか? 実は私も忘れていました。30数年来の友人である川口和久さんでした。

僕、ドーム球場は好きじゃなかったんです。特に福岡ドームは……

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インタビューは意外な告白から始まりました。両翼100メートル、中堅122メートルの福岡ドームは、ピッチャー有利な球場のはずです。完全試合を達成した槙原さんは、「サイズに助けられ、安心して投げられた」と語っていました。

しかし、川口さんはそうではなかったようです。

同じドームでも東京ドームは明るいからまだいいんです。福岡ドームは暗くて、開放感が感じられなかった。それにマウンドが高い。マウンドに上がった時からやりにくさを感じていました

川口さんは続けます。

僕の生命線はアウトコースのストレート。スピードは135キロも出ていればいいんです。これを出し入れすることで主導権を握っていく。ところが福岡ドームは暗い上にマウンドが高いから18.44メートルの距離感がなかなか掴めない。そのためアウトコースのストレートの軌道が安定しないんです。それが初回から崩れてしまった理由です