保健所職員の告白「検査も人員も何もかも足りない」あまりに過酷な現場

「公衆衛生」を軽んじてきたツケ
中原 一歩 プロフィール

そもそも、保健所は地域保健法にもとづき、都道府県、政令指定都市、中核都市などに設置されていて、現在、全国に472ヶ所ある。しかし、保健所が司る「公衆衛生」という分野は、この四半世紀、人員も予算も削減され続けてきたと目白大学大学院看護学研究科で教鞭をとった経験もある社会学者で、流通科学大学専任講師の新雅史さんは訴える。

「日本の保健所は戦後すぐに、結核の予防と乳児死亡率の減少という成功を収めますが、皮肉にもその成功体験が仇となって、その後、長期的に保健所の予算と人員は削減されました。近年は、感染症による死亡数が少なくなるなかで、保健業務が、慢性疾患の予防に偏ることになりました。

また、地方分権の流れで、市町村であっても保健業務を行えることになり、保健所の数自体も減少しました。日本の感染症対策の拠点である国立感染症研究所の予算も削減され続けましたが、一方の地域拠点であった保健所の存在も弱まり続けたのです」

さいたま市保健所庁舎〔PHOTO〕WikimediaCommons・ Ebiebi2氏の投稿
 

「一人暮らし」からの相談が激増

都内にある別の保健所で働く男性(39)は、3月初旬からほとんど休みが取れていない。残業時間は100時間を超えている。感染症を担当する部署は平時でも職員数は数人。日々の仕事もエイズや結核、インフルエンザの感染防止のために、区報に注意喚起を促す広告を掲載するなど啓蒙活動が中心だったと語る。それが新型コロナウィルスによって一変する。

「帰国者・接触者相談センターが置かれてからは、部署横断の20人体制で相談電話を受け続けています。感染濃厚な住民に対してはPCR検査を受けることができる病院を紹介し、陽性だった場合は入院する病院の手配をします。そして、後日、防護服など感染防止策を講じた上で、住民の自宅に迎えに行き、病院に連れて行きます。今回、初めて防護服を着用したという職員もいました」