保健所職員の告白「検査も人員も何もかも足りない」あまりに過酷な現場

「公衆衛生」を軽んじてきたツケ
中原 一歩 プロフィール

検査の基準には「幅」があった

当初、各地の保健所では問い合わせ者の中から、PCR検査に誘導するために、あるガイドラインを適用していた。

「37.5度以上の発熱が4日以上続く」「強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある」。それに加え「65歳以上」「妊娠している人」「糖尿病、心不全、呼吸器疾患の基礎疾患がある方や透析を受けている人」は要注意。

このガイドラインは厚生労働省が作成したものだが、保健所によってその適用には「幅」があったと、都内の保健所で相談業務に携わっていた職員(34)は語る。

「当初から都内でコロナ陽性患者を受け入れる病院数もベッド数も限られていました。だからこそ、トリアージの観点から徹底してクロ(陽性の可能性が高い人)を優先する空気がありました。具体的には38.5度以上の発熱がなければ、検体採取ができる外来に繋ぐことはしなかった。

つまり、本来は陽性の可能性があるにもかかわらず、電話相談の時点で38.5度の熱がなかった人はシロと判断されたのです。もちろん、自覚症状がなくても微熱があれば自宅待機を要請しましたが、中にはお墨付きをもらったと勘違いして、普通に市民生活を送った人もいたと思います」

〔PHOTO〕iStock
 

この「38.5度」という数字は、あのダイヤモンド・プリンセス号で集団感染が発生した時にも指標となった。両親が同客船に乗船していた家族はこう証言する。

「船内では、PCR検査を実施するか否かの判断の目安が、38.5度の熱が4日以上続いている、でした。37.5度では検査もしてもらえなかった。中には38度あっても検査をしてくれず、処方されていた解熱剤を飲まないと申告して、やっと検査に回された人もいたそうです。あと年齢もあったと思います。80歳の父は優先して検査を受けられましたが、70代の母は38.5度あっても検査は後回しにされました」