アップルは4月20日頃から、iPad Pro対応の周辺機器「Magic Keyboard」の発売を開始した。3月末に新型のiPad Proと同時に発表されていたもので、当初は「5月末発売」とされていたが、どういった事情か、急遽、発売が前倒しになっている。
この製品は、発表当初からiPad Pro本体が「宙に浮くような」特異なデザインで注目された。その話題性もあってか、すでに初回出荷分は完売しており、4月23日現在、入手までに5〜6週間を要する人気ぶりになっている。
一方で、この製品は非常に大きな“ジレンマ”を抱えている。
税抜き段階でも、価格が3万円以上もするのだ。しかも、iPad Proとセットにすると、ノートPCと変わらない重量になる。
「なぜ、そこまでしてiPadでなければならないのか?」
この点を突き詰めてみることは、「IT機器で作業する」ことの本質を考えるうえで、とてもよい題材になる。
Magic Keyboard+iPad Proの使い勝手を検証しつつ、「作業のためのIT機器を選ぶとはどういうことなのか」を考察してみよう。
なお、本稿の製作作業は、執筆から動画編集までを含め、すべてMagic Keyboard+iPad Proでおこなっている。
以前の本連載で、3月発売の新型iPad Proについて紹介した。
Magic Keyboardは、その新型iPad Proと組み合わせることを前提とした商品で、今回の筆者の作業環境もそうしている。だが、新型専用というわけではなく、2018年に発売された、同じ「角型デザイン」になって以降のiPad Proであれば利用可能だ。
サイズは本体に合わせ、12.9インチモデルと11インチモデルがあり、それぞれ本体と同サイズのものでないと使えない。今回、試用しているのは、12.9インチ用のものである。
以前から、iPadのようなタブレットにセットして使うキーボードは多数、製品化されてきた。アップル自身、「Smart Keyboard」という名称でiPad Pro専用のキーボードをこれまでも販売してきている。
だが、「タブレット用キーボード」というのは、じつは難しい製品だ。実際、なかなかしっかりしたものが存在しない。
タイプの感触が悪かったり、タブレットの角度が変えられなかったり、膝の上で安定してタイプしづらかったりと、どこかに欠点が出てしまうのだ。
結局、「ディスプレイとキーボードをヒンジでつなぐ」ような構造の場合、一般的なノートパソコンに使われている「クラムシェル構造」が最も合理的で、本体としての重量がディスプレイ側にあるタブレットでは、どうしても妥協が必要になる。
だが、Magic Keyboardは、「タイプ感」と「安定性」の両面で、従来のタブレット用キーボードにはない完成度を実現している。
では、具体的にどこが優れているのか?