新型コロナで拡大するテレワークで、少子化も改善される理由

通勤は機会損失です
河合 雅司 プロフィール

通勤コストは100万円超

働き方改革に伴って、職場で過ごす時間が短くなってきたと実感する人も多いだろうが、すし詰めの電車に揺られたのでは、改革効果は大きく損なわれよう。そもそも、勤労世代が激減してしまう時代において、往復の通勤電車の中に大切な人材を長い時間拘束してしまうのはあまりにもったいないし、今後はそうした余裕もなくなっていく。

実際に、内閣府の報告書「地域の経済2017」が「通勤による年間の損失」を、都道府県別にはじき出しているが、東京都(66万2000円)、次いで神奈川県(65万6000円)、千葉県(50万円)と東京圏が上位に並ぶ。

 

これと機会費用が少ない5県(鳥取県、山形県、島根県、青森県、宮崎県)の平均額34万1000円とを比較し、さらに住宅コスト(他地域との家賃の差額)が毎年36万〜52万円程かかることを加味して試算しているが、東京都や神奈川県の勤労者は、合計で101万〜117万円の通勤コスト(社会的損失)をかけながら働いていることになるのだという

これは、あくまで理論的なコストだが、通勤がどれだけの経済的負担となっているのかを示すには十分なデータといえるだろう。通勤がなければその時間を仕事に費やし、利益を上げられる。つまり、通勤は機会損失ということになる。

満員電車通勤は大きな機会損失(photo by iStock)

勤労者は消費者やボランティア、地域活動の担い手の顔も持っていることを考えれば、さらに経済に影響を与えよう。

日本人の通勤時間は世界でも突出して長いと言われる。通勤時間が生活全般を圧迫していることも考え合わせれば、生産性をマイナスに作用させていることは間違いない。

内閣府も試算を踏まえて通勤コストを社会的損失と位置づけ、「働き方や働く場所の多様化が課題だ」と提言。企業や政府機関が職場を地方に移すことで職住近接を進めるほかに、職場以外で働くテレワークの活用によって通勤コストを抑制するよう求めている。

日本の通勤時間が長くなった背景には、戦後の住宅政策が深く関連している。経済発展期には、安い住宅を職場近くに整備する社会的余裕がなく、地価の安い郊外で住宅開発を進めた。経済の成熟期においても、オフィス街と住宅街を分けて考える都市計画は続き、郊外へと宅地開発が広がっていったのである。

これを逆に考えるならば、通勤時間を削減し、生産性を向上させるには、職場近くに良質な住宅を安価に提供していくこともポイントとなる。かつては社宅を持つ企業も少なくなかったが、自前ではなく複数の企業が共同で持つことも考えればよい。

多様な産業、職種の社員が同じマンションに集まり住み、交流を深める機会を持てれば、新たな商品開発のヒントも得られるだろう。結果として、経済全体の生産性も大きく改善するはずだ。