何かの冗談か? マスク禁止から着用、活動家を次々逮捕…衝撃の現実

香港情勢からコロナ後の世界を考える
阿古 智子 プロフィール

また、香港政府はマスクの購入制限や配分を積極的には行わなかったため、マスクの不足が深刻になり、値段が高騰し、一時は医療従事者にさえ行き渡らない状況に陥った。

そうした中、市民団体や企業が連携し、マスクを生産したり、配布したりする動きが広がった。区議会議員、立法会議員、政党関係者なども団地でマスクを配り始めた。民主化運動に積極的なグループも、率先してマスクの調達に動いた。

雨傘運動のリーダーの一人で、現在は「香港衆志」(デモシスト)という政治団体の秘書長として活動している黄之鋒(ジョシュア・ウォン)は仲間と共に、アメリカや中南米のホンジュラスから130万枚のマスクを輸入し、1箱50枚入りのマスクを(1)98香港ドル(郵送費は香港衆志が負担)、(2)郵送費込みの128ドル、(3)「感染症防止対策基金」への寄付金を含む258ドルという3種類の金額で販売した。

当初、オンライン販売のシステムがうまく機能せず、(1)しか選択できない、クレジットカードから代金が何度も引き落とされるといったトラブルが相次いだようだが、徐々に問題を解消し、必要な人たちの手にマスクが渡っていった。

黄之鋒〔PHOTO〕gettyimages

23歳の活動家に激怒する大国

黄之鋒は2017年8月、雨傘運動において非合法集会を組織したとして、禁固8ヵ月の有罪判決を受け、服役している。さらに2019年8月30日には、同じく雨傘運動で活躍した周庭と共に、突如逮捕された。6月21日にデモ隊が警察本部を包囲した際、不許可の集会を主導したのが二人の容疑だという。

反逃亡犯条例改正案をめぐる今回のデモはリーダーなき運動と言われており、黄之鋒がリーダーとなって集会を呼びかけたりはしていない。私は周庭に直接話を聞いたが、彼女も全く身に覚えがなく、自分とは関係のないことを容疑に逮捕されたと嘆いていた。二人の保釈は同日夜に認められた。

 

2019年9月、黄之鋒は「香港人権民主主義法案」の可決を促そうと、保釈中の身のままに訪米し、米議会の公聴会で証言している。

同月8日に台湾から帰国し、その足でドイツへ、ドイツから米国へ行こうとしていたところ、空港で保釈条件に違反したとして一時拘束されたが、保釈条件では逮捕前に既に手配されていた海外渡航は許可されていることが判明し、ドイツと米国への渡航も認められた。

「香港人権民主主義法案」は、11月27日にトランプ大統領が署名し、成立した。これにより国務長官は、2023年までの毎年、香港の高度な自治を保証した「一国二制度」が機能しているかどうかを検証する年次報告書を発行しなければならない。

機能していないと判断されれば、香港が受けている関税などの優遇措置を見直される可能性がある。香港で人権侵害を行った当局者に制裁を科したり、違反した政治家らの資産を凍結したりすることも可能となる。