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死後にコロナ感染がわかることも…いま解剖現場に忍び寄る恐怖と危険

死因は肺炎、それでも肺を切らなかった

感染者を解剖できる施設はあるのか?

検死官からメールが届いた。

解剖を依頼する連絡かと思ったのだが、そうではなかった。新型コロナウイルスに感染した人を私の施設で解剖できるか教えてほしいという。今後、ウイルス感染者が事件や事故で亡くなって解剖しなければならなくなったとき、どこの解剖施設で解剖ができるのかをあらかじめ警察は把握しておきたいようだ。

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新型コロナウイルス感染者を解剖するときには、適切な感染防御の方法が必要となる。不適切に解剖すると、ウイルスが周りの環境に漏れ出したり、解剖者に感染したりする。

いま私が使っている解剖室は3年前に新築されたもので、そのときに解剖台も新調された。解剖室の中は陰圧になるように設計されていて、中の空気が解剖室の外へ漏れ出すことはない。解剖室の中の空気は密閉された空間を通って屋上まで運ばれ、特殊なフィルターを通して屋外へ排出されるようになっている。

解剖台にも感染対策が施されている。解剖台の上の方から遺体が載っている解剖台の下に向かって空気が流れるように設計されている。解剖台の上で臓器を切り出して飛沫が飛んでも、解剖台の下に吸引される。解剖をしている人が飛沫を吸い込まないようになっている。

 

解剖室や解剖台については、感染対策が整っているのだが、感染防御に使う備品が揃っていない。ゴーグルやフェイスシールドといった備品が全く手に入らない。

結局のところ、検死官には、感染者の解剖は、今の状態では対応することが難しいと返事をすることにした。