私たちが「接触8割減」「三密回避」できないシンプルな理由

効果的な「行動変容テクニック」とは?
原田 隆之 プロフィール

行動の心理学では「禁止」メッセージはなるべく使わないようにするというのも1つのテクニックである。つまり、「〇〇しないようにしましょう」というメッセージは、行動心理学的には良いメッセージではない。「〇〇しない代わりに、△△をしましょう」というのが良いメッセージである。

禁止で終わらせるのではなく、何かその代わりの行動も提案してメッセージとするべきなのである。これを「死人のルール」と呼んでいる。死人にもできるようなことをメッセージとするのではなく、生きているわれわれにしかできないことを伝えるようにする。

たとえば、「エレベーターのスイッチをさわらないようにしましょう」というのは、死人にもできる。しかし、「エレベーターのスイッチを指先ではなく、指の第二関節で押すようにしましょう」というのは、死人にはできない。こちらのほうが良いメッセージである。

 

3 咳エチケットを実践しよう

これも重要なメッセージではあるが、難点は漠然として何をすべきか行動が具体的にわからないという点である。行動心理学で推奨されるのは、具体的でシンプルなメッセージを伝えるということだ。咳エチケットとは何かを具体的に伝え、それがシンプルで実行しやすいものであると伝わりやすいし、実践されやすい。

咳をするときは、口を手で覆うのではなく腕で覆うという方法がよく紹介されているが、これはマスク習慣のない海外の咳エチケットであり、海外のものをそのまま伝えても実践されにくい。メッセージはその社会の文化や習慣に合わせることも重要だ。とすると、日本の場合は次のようなメッセージが、一番簡単で伝わりやすく、かつ実践されやすいだろう。

「咳エチケットのために、いつもマスクを忘れないようにしましょう」