旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、音楽家の青木隼人さんに選書してもらいました。

ページをめくるたび、
音や風景が流れてくる本

本との出会いは、ひとつの旅の始まりかもしれない。ページをめくることは、窓ごしの移りゆく景色を眺める楽しみに似ている。

CUCUMBER JOURNEY
キュウリの旅

しまぶくみちひろ 著 小学館(2004)
ピクルスを作りながらロンドンからバーミンガムへ向かったボートの旅。美術家である著者の実体験をもとにした絵本。レシピも収録。

『キュウリの旅』は現代美術家の島袋道浩さんが、ロンドンからバーミンガムへ運河を辿りながら、キュウリがピクルスになるまでの船旅を絵本のようにまとめた一冊。旅は、普段の生活を解き放って、自分が知らなかったあたらしいリズムに身を委ねること。この本でリズムを生み出しているのはキュウリであり、ナローボートのゆったりとしたスピードだ。そのリズムはなんて心地よいのだろう。

耳をすます旅人
友部正人 著 水声社(1999)
ミュージシャンならではの視点で綴られた、全国100ヵ所以上を巡る旅のエッセイ集。行間から音楽が聴こえてくるような一冊。

歌うたいで詩人の友部正人さんによる『耳をすます旅人』は、北海道から沖縄まで、旅した土地、人、景色についてのエッセイ集。読むと自分がそこにいるような気持ちになる。それは友部さんがつかまえた光や匂いや音が、いきいきとしたまま綴られているから。どこでも耳をすましているような友部さんの足取りは、そのまま歌のフレーズになっていくようで、読むと友部さんの歌を聴きたくなる。

語るに足る、ささやかな人生[アメリカの小さな町で]
駒沢敏器 著 NHK出版(2005)
アメリカ全土に星の数ほどあるスモールタウンを巡る車の旅。土地土地で出会った人々との触れ合い、彼らの人生を13の短編で紡ぐ。

『語るに足る、ささやかな人生』。作家であり翻訳家の駒沢敏器さんは楽器のような人。アメリカのスモールタウンを巡る旅で出会った風景が低音を奏でて、登場する人たちのおしゃべりは高音で歌う。彼はその響きの美しさや悲しさを一音一音確かめながら、この本を書いていったのではないだろうか。いい楽器の音がそうであるように、この本を読んだ後の余韻も深くて長い。

PROFILE

青木隼人 Hayato Aoki
1978年生まれ。静謐なギターのメロディが人気。アルバム『日田』『小さな歌』等。森ゆに、田辺玄とユニット「みどり」としても活動。


●情報は、2020年2月現在のものです。
※本記事内の価格は、すべて税込み価格です。
Photo:Toru Oshima Edit:Yuka Uchida