コロナで注目の「セックス・ワーカー差別」、フェミニズムとの複雑な関係

差別を固定化させないために
菊地 夏野 プロフィール

典型的なのがセクシュアリティ(性)に関わるテーマだ。ポルノや性表現などは、今もSNS上で炎上しがちな大テーマだが、これについても「フェミニストはポルノに反対している」「フェミニストは性表現を支持している」という両方の語りがあり、一体どちらなのか混乱する人もいるだろう。

だが実はこれはどちらも正しい。フェミニストには、性表現やポルノに反対する人もいれば、賛成する人もいる。どちらもフェミニズムの観点からそう主張しているのだ。こんなふうに、対立する論が混在し、ともに意見をたたかわせるのがフェミニズムだと私は思っている。

〔PHOTO〕iStock
 

フェミニズムとセックス・ワークの議論

そんななかでも、セックス・ワークの問題ほどフェミニズムにおいて議論を呼び、立場が分かれるテーマもない。本稿で紹介したいのは、この多様な議論を呼ぶセックス・ワークについて、近年、それに否定的な態度をとるフェミニストが世界的な水準で目立つということである。最初に立場を明示しておけば、私はそうした考え方に危うさを感じている。

例えば去年(2019年)11月20日付で発表された「かがみよかがみ」サイトにおける、上野千鶴子さんのセックス・ワークに関わる発言を挙げよう。この記事は、若い女性たちがフェミニストとしての上野さんに性について質問をする座談会形式で、上野さんから下記のような発言があった。

私がセックスワークや少女売春になぜ賛成できないかというと、「そのセックス、やってて楽しいの?あなたにとって何なの?」って思っちゃうからなのよ。
自分の肉体と精神をどぶに捨てるようなことはしないほうがいいと思う。自分を粗末に扱わない男を選んでほしい、だってそっちの方が絶対セックスのクオリティが高いもん。

この部分について、セックス・ワーカー当事者やその他の人々から批判の声が上がった。セックス・ワークを「自分の肉体と精神をどぶに捨てるようなこと」と見なしている点が批判されたのである。批判した人々の中にはフェミニストもたくさんいたし、私も批判を展開した一人である。

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