生活習慣病を専門とし、個人クリニックと大きな病院両方に勤務する小田切容子さんは「患者さんをきちんと診療できない」現状に直面している。「PCR検査をどんどんするべきだ」という声も多いが、それができないのはなぜか。そして、新型コロナ感染症ではない病気の患者を診る医療現場はどうなっているのか。2020年4月22日現在の「今」を伝えてもらった。

発熱と腹痛に苦しむ糖尿病患者

我々が恐れている医療崩壊は、新型コロナの影響で他の病気や出産の患者さんを診ることができない状態に陥ることです。ある意味で、現在の東京は医療崩壊寸前ともいえます。

ある50代男性の方の例を挙げてみましょう。その方は、2型糖尿病で通院中ですが、直近のHbA1c が9%台となり、「コントロール不良」、つまり治療中ながら数値がよくなっておらず、要注意の患者さんです。

前日から続く強い腹痛、水様下痢、発熱のため私が勤めるクリニックに電話をかけてきました。ご本人は都内在住で一人暮らし、外食が多く、最近も仕事などで複数人での会食もあったとのことです。また数日前にマスクをしていない人が近くでくしゃみをしたり話しかけてきたりしたとのことでした。

この方は自身の新型コロナウイルス感染症を疑い、自治体の帰国者接触者相談センターに問い合わせの電話をしたところ、まずは主治医の診察を受け、その医師から保健所へ連絡するようにと言われ、電話をかけてきたのです。しかし、このクリニックは、新型コロナウイルス感染症患者を受け入れる体制が整っていないため、院内感染の懸念から、やむなく新型コロナウイルス感染症が疑われる患者の診察はしない方針をとっています。そこで私は男性に電話をして病状を伺いました。

オンラインや電話での問診がメインとなっている Photo by iStock

発熱と腹痛、そして下痢症状は2日続いており、ふらつきが強いとのこと。電話の声からぐったりしている様子が窺えました。糖尿病患者、特にコントロール不良の方が感染症にかかったり下痢嘔吐のような脱水を招く状態になったりすると、ケトアシドーシスと言って、場合によっては命に係わる状態になることがあります。この男性はケトアシドーシスになりやすい薬も内服していました。

ご本人は新型コロナウイルス感染症をとても心配されていました。ただ、私はこの時点では他のウイルスなどによる感染性胃腸炎の可能性の方が高いのではないかと思いました。