新型コロナの感染拡大、自粛要請で多くの人が経済的にも不安を抱えている。今までも、災害やリーマンショックなどによる経済的な困難は、世界をおそってきた。そして、そこから立ち上がってきた人々がいた。馬場千枝さんの連載「お金と女の人生」の第3回は、夫が早逝し、経営していた店も全焼、困窮の淵から現在悠々自適な生活を送るまでに至った女性のたくましい姿をお伝えする。

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婚家全焼、夫が早逝、義親の介護…

長く生きていると、実にさまざまな体験をする……としか言いようのない、この現在の世界の姿。私のようなフリーランスは、まさに明日をも知れない立場なのだが、こういう危機的状況の時、数年来の友人で、今年、73歳になった岡本芙美子さん(仮名)のことを考えると、少しホッとして、勇気をもらえる。

都市圏から車で約2時間の田舎に生まれ育ち、近隣の町へ嫁いだ岡本さんは、現在もその土地で家族とともに暮らしている。はきはきと話し、笑顔が愛らしく、いつもこぎれいな服を身につけているお洒落な女性で、生活の苦労のようなものは、その小柄な体や表情にはまったく現れない。しかし彼女が話してくれた人生は実に波瀾万丈だった。

婚家が全焼し、夫は癌で早世し、舅姑の介護に奔走し、お金の苦労も山のようにしてきたが、所有する投資信託の評価額は4000万円以上。100歳まで生きても大丈夫なだけの財産を作り、悠々自適の生活を送っている。親から大きな遺産をもらったわけでもなく、高学歴でもない。自分でコツコツと働き、学び、創っていった人生は、どこまでも骨太だ。ごく平凡な女性でも、賢く努力をすれば、ここまでできる。これは私のような凡人にとって、キラリと光る希望だと思う。

生活費月20万、借金の利子が毎月30万

岡本さんは5人きょうだいの長女で、親の勧める見合いで結婚したのが21歳の時だ。嫁ぎ先は町の小さな洋品店で、実家よりも豊かな家だったから、ちょっとはましな生活ができるだろうと思っていた。2人の子どもに恵まれて、夫と義父母の三世代同居。家事育児に店の手伝いと、忙しい毎日を送っていた彼女だが、結婚12年目のある晩、大事件が起きる。隣家の火の不始末で自宅兼洋品店が全焼。パジャマ姿で焼け出されてしまったのだ。

親から店を引き継ぎ、二代目として気楽に経営をしていた夫だったが、再建のために背負った借金は大きかった。

「当時はバブル景気の頃で、金利が8%、9%もある時代です。毎月20万円で生活しているのに、利子だけで毎月30万円も返さないといけない。一から店をやるのではなくて、マイナスからのスタートでしょう。なんのために働いているのか、本当に涙が出てきます」

正月も休みなく、年中無休で働いた。朝7時から夜10時まで店を開け、家族が交代で食事を取るという生活だ。

休みというものはなかった(写真の人物は本文と関係がありません)Photo by iStock

「火事に遭って贅沢はしなくなったし、ものに執着がなくなりました。家財道具はもちろん、ダイヤの指輪も着物もタンスも、何もかも全部燃えたんです。割り箸と紙コップで生きていける。10年くらいは人からもらった箸のままで生活していました」