新型コロナウイルスによる一斉休校により、共働き家庭の中でも特に、働くお母さんたちから悲鳴が上がったことで、「子育ては母親の役割」「幼い子は母親と一緒にいるべき」という古い価値観がまだ日本に根強くあることが改めて浮き彫りになりました。

令和になっても残り続ける「母性神話」。しかし、子育てを担うべきは母親だけではない、ということは科学的にも証明されている、と上智大学総合人間科学部准教授の齋藤慈子氏はいいます。

※以下、『正解は一つじゃない 子育てをする動物たち』(東京大学出版会)から、著者の許可のもと、一部を抜粋し再構成しています。

誰にとっても「子どもはかわいい」わけではない

赤ちゃんや子どもはかわいい、当然のことのように思うかもしれません。しかし私自身は、自分の子どもが生まれるまでは、子どもをかわいいと思ったことはほとんどありませんでした。それはなぜなのか、生き物としてまずいのではないか、という疑問が研究のモチベーションの根底にありました。

赤ちゃんの顔は、大きな目やふくらんだ頬といった、ベビースキーマと言われる特徴を持つため、大人はかわいいと感じ子育て行動が引き出される、とローレンツは指摘しました。しかし、世話の必要量や幼さが、かわいいという感覚や子育て行動を引き出すわけではないということがわかってきています。

ヒトの新生児は非常に未熟な状態で生まれてくるため、多大なる世話が必要ですが、新生児期は一歳前後の頃に比べるとかわいいと感じられません。大学生に聞いても、子ども好きか否かで「かわいさ」の評定には差があります。