「浮気」こそ、人類の脳が巨大になった原因かもしれない

「社会脳」という謎【前編】
Ore Chang プロフィール

人間は「都合のいい時だけ」協力する

進化心理学でもふつう、部族間に勃発する戦争は包括適応度、互恵的利他性、間接互恵性、性選択といった通常の利己的遺伝子論のロジックから説明される。サピエンスが行う戦争とチンパンジーが行う戦争には、根本的には同じ説明原理が適用されている。

マット・リドレーは『徳の起源』において「われわれは自己を集団のために犠牲にするようにデザインされているのではなく、自分たちのために集団を利用するようにデザインされている」と、この論理を簡潔に表現した。

 

リドレーは各種の証拠を検討した上で、さらにこうも述べている。

〈淘汰によって集団生活を利用するようになった知性(たとえば、体制順応など)と、集団淘汰によって進化してきた知性は同一ではないのである。集団主義は個体淘汰を進めるが、集団淘汰を進めるわけではない。

問題なのは、われわれが本能的に集団を形成する傾向が強いため、人間は集団淘汰されてきたというふりをする──あるいは、本当にそれを信じこんでしまうことさえある──ことなのだ……。

要するに、人々は個人の利益よりも集団の利益を優先させていると主張するが、それは都合のいいときにだけ集団と行動を共にするという事実をあからさまにしないほうが有利であるからなのだ。

あなたが人々にそれを指摘したら、あなたは嫌われ者になるだろう。 ホッブズがこの原理を発見して以来ホッブズ主義者たちが受けてきたのと同じ扱いを受けるのである〉(マット・リドレー著、岸由二監修、古川奈々子訳『徳の起源: 他人をおもいやる遺伝子』2000年、翔泳社)

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