「浮気」こそ、人類の脳が巨大になった原因かもしれない

「社会脳」という謎【前編】
Ore Chang プロフィール

俗流進化論においては、人類の大きな脳は「賢いハンターになるため」に進化したという根強く人気な説もある。「祖先が住んだアフリカのサバンナ環境には獰猛な猛獣が多く、身体がひ弱な人類にとってはあまりにも過酷な環境だった、だからわれわれは賢くなる必要があったのだ……」と解説は進む。

しかし、これはあまりにもマンガチックな発想から来たものではないだろうか。「腕力で勝てないならアタマをつかって勝つしかないだろ!」というわけだが、個人がいくら創意工夫をしたところで限界がある。自然淘汰によって生じる進化と、個人の努力や鍛錬により達成される知識獲得や知力の増大は、根本的に全くの別物だ。

種の系統が違っても、生息環境や捕食対象が同じ生物は、たとえばサメとシャチが似ているように、同じような姿形や機能を持つようになる。この「収斂進化」の論理からすれば、サバンナ環境で生き延びるための進化の最適解とは「アタマをよくすること」ではなく「カラダを大きく、強く、速くすること」なのは明白だ。

たしかに、サピエンスが大きな脳を使って猛獣にうまく対処できるのは事実だ。しかし、脳の進化が生じたそもそもの原因と、大きな脳を持つことによって結果的に生じた技能は区別しなくてはならない。

「われわれは協力してチームプレイで猛獣を狩るハンターだ、そのために脳は大きく進化した」といった類似説についても同様のことが指摘できるだろう。

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遺伝子は他者と「協力」しない

さて、これまで挙げてきたような脳の進化についての「生態的チャレンジ」説では、ひたすらに「協力の重要性」ばかりが強調される。生物学者たちがいわゆる "ハミルトン革命" を経たことによって「群淘汰の誤り」を正すようになるのは1970年代に入ってからだ。

それまでは、自然淘汰を引き起こす競争とは、漠然と「種 vs. 種」のチームプレイだと考えられていた。アフリカのサバンナでは「ライオンチーム」vs.「シマウマチーム」の争いが繰り広げられている、「人類チーム」はそこに参戦し勝利するために脳を発達させた、というのだ。

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