ベストセラー『ブラを捨て旅に出よう』の著者で、旅作家の歩りえこさんによるFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)では、歩さんが旅の途中で出会った印象的な男性とのエピソードをお届けしています。

前回の記事では、ボスニア・ヘルツェゴビナで知り合った親切な観光ガイドが突然豹変した話を綴っていただきました。今回は、約8年前に出会ったミャンマー人青年との甘酸っぱいエピソードを綴っていただきました

歩さんの今までの連載はこちら▶︎

車にあるはずのアレがない!
衝撃の光景を目にした旅の始まり

ミャンマーは貧しいながらも幸福度が非常に高い国。人々は満面の笑みを浮かべ、幸せそうな表情をした人ばかり。【素朴】という表現がぴったり当てはまる国だ。

そんな癒しの国だが、経済封鎖が解かれると共に急速に経済発展が進み、ミャンマーという国そのものが大きく変わろうとしていた。あと数年すると、劇的な発展を遂げてその素朴さが失われてしまうかもしれない。「今のうちにこの眼でミャンマーを見ておきたい」そんな想いで8年前の30歳の頃、首都ヤンゴン(旧首都/現首都はネイピードー)へ飛んだ

空港の到着ゲートへ出ると、ミャンマー男性が皆こぞって巻きスカートのような布を巻きつけている姿に目が釘付けになった。どうやら、この格好は【ロンジー】という伝統衣装だそう。どの男性もとても細身・驚くほど小顔で素朴な顔立ちをしている。

伝統衣装ロンジーを履くミャンマー男性たち。写真提供/歩りえこ

そして、思わず頭をなでたくなるくらい純朴そうな子供たちは皆、頬っぺに白いものを塗りたくっている。どうやら頬に塗っているのは【タナカ】というミャンマーの日焼け止めらしい。タナカって日本人の田中さんが作ったのだろうか?

ミャンマーの日焼け止めタナカを塗る少年。写真提供/歩りえこ

気になって近くにいた英語の出来そうなビジネスマンに尋ねてみた。「タナカはタナカだよ。タナカは木を石皿でこすって水で溶かしたものなんだ」なんと…木で出来た日焼け止めなんて、お金がかからないというか、素朴すぎていかにもミャンマーらしい。田中さんと全然関係がなくてちょっとがっかりだけど……。

やがてヤンゴン中心地に向かおうとタクシーに乗ろうとしたが、衝撃的な光景が眼に飛び込んできた。車にあるはずの窓ガラスがない。また別の車を見ると今度はドアがない! どの車もまるで交通事故に遭ったかのように破損、欠損している。

「ノードア?ドアはどこになくしたの?」とタクシードライバーに聞いてみると、まさかの答えが返ってきた。「ドアは最初からないよ」え? どういうこと? 聞けば殆どの人が究極のオンボロ中古車を買って使っているらしいので、ドアや窓がないなんて当たり前。別にドアや窓がなくても支障はないという考えらしい。いや…ドアがないなんて下手すりゃ死んじゃうレベルだよ。