高齢者と同居する家族の危機感

4月上旬、父親の17回忌のために帰省を予定していた女性(50代、神奈川県在住)は、悩んだ末に断念した。

新型コロナウイルスに感染する可能性は誰にでもある。今兆候がなかったとしても、数日後には発症しているかもしれないし、新幹線での移動中に感染しないとも限らない。そうなれば、80代で基礎疾患もある母親にうつしてしまい、最悪死に至らしめてしまうだろう。あってはならないことだった。断念したことを電話で告げると、母親はホッとしたように言った。

「それがいいよ。今はもう怖くて一歩も外に出ないで暮らしている。感染した人がいつどこにいるか分からないから、怖くて仕方ない。あなただって今大丈夫でも、移動している間に感染するかもしれないからね。実家に来るのは、流行が去ってからにしてちょうだい」

新型コロナウイルスの影響で新幹線利用客は激減している photo by gettyimages

しっかりした口調に安心したが、母親と同居している弟は憂鬱そうに言った。

「散歩にすら出歩かないせいで、お母さんはどんどん足腰が弱ってる。筋肉が一気に落ちて、トイレに行くのも壁にすがってやっとだし、認知症も確実に悪化しているよ。このままの生活が続いたら、じき寝たきりになってしまうかもしれない。

それにいくら気を付けていても、僕は仕事に出なくてはならないから、ウイルスを家に持ち込んで、感染させてしまう可能性がある。毎日緊張しているんだ」

新型コロナ禍真っただ中の日本。この女性の家族のように、高齢の親や病気の家族と同居する人たちの危機感は、日々深刻さを増している。なんとか安全・安心を高められる方法はないものか。在宅医療の名医として知られる小澤竹俊医師(めぐみ在宅クリニック院長・横浜市)に、在宅医療・介護の現状や家庭でできるコロナ対策について取材した。