日本社会は「巨大な中学校」のよう…コロナ危機で克服すべき3つのこと

だからこの国は衰退の一途をたどってきた
内藤 朝雄 プロフィール

強制的な「へつらいなかよし」体質

【事例2】

ある産業機器メーカーの若い社員A氏はきわめて優秀で、営業では売り上げナンバーワンを記録した。機械についての試験でもトップ成績である。要するに会社にとっては、仕事ができる有望社員である。彼は、入社後、下品な上司と飲みに付き合い、仕事と関係のない無駄話にえんえんと付き合わされるのが拷問のように苦痛であった。

とくに性的な接待が嫌いなA氏は、「おやじたち」のキャバクラに付き合わされるのが最も苦痛であった(「気持ち悪くて吐きそうになる」)。無能な支店長は、会社の経費で飲み食いやキャバクラ遊びを楽しみたい。内心いやがっている部下たちをひきつれて飲み歩くことを強制した。支店長はそれを部下の教育と称していた。

本社の幹部たちは効率的な経営をめざしていたが、地方支店の非効率は著しかった。顧客と飲みに行ってなれあうのが、営業スタイルになっていた。

〔PHOTO〕gettyimages

A氏は、飲みの集まりではなく、機械についての要点をわかりやすく説明する、顧客ニーズにあわせたセミナーを有料で行うスタイルをつくり、会社でトップの営業成績をだした。顧客も、だらだらと集まって酒を飲むよりも、収益につながる機械の活用法を知り、適正な価格で購入し、個別の事情に応じた運用への道筋をつけたかった。

A氏以外にも優秀な若手が高い営業成績を上げることがあったが、上司にいじめられて会社をやめた。A氏は、だんだん支店長から毎日のように罵倒され、とげとげしい言葉を浴びるようになった。A氏の妻が妊娠し子どもが生まれる時期には、支店長は「流産する」といった言葉をA氏に浴びせることすらあった。

 

A氏は会社の幹部にそのことを話した。

幹部たちは、支店長を二度と浮かび上がれないような左遷コースに落とした。会社は、これまでの古い体質を改善しようとしている時期にあった。何十年か勤めた支店長を切り、有能な若手社員のA氏の方を選んだ。

支店長は、幹部たちにとがめられたとき、A氏のためを思って、A氏を社員として教育しようとしていたといいわけをした。そのようないいわけは通じなかった。

A氏はなんとか生き延びたが、A氏以外の有能で高い営業成績をのこした何人かの若手社員たちは、無能な上司に対するへつらいや極めて不快な人間関係を要求する圧力に屈して会社をやめた。会社に収益をもたらす優秀な若手ほど会社をやめるのだ。

このようなメンバーシップ型雇用の、上司を中心とした強制的な「へつらいなかよし」体質が会社の非効率と収益の低さをもたらしていた。