108兆円の見せかけ、省庁の思惑…元官僚作家が斬る「コロナ対策迷走の元凶」

「国のホンネは金を出したくない」

安倍晋三首相が4月16日、東京都など7都府県に発令していた「緊急事態宣言」の対象地域を全国に拡大すると発表した。同時に、困窮世帯に限り30万円を支給するとしていた経済対策を改め、現金10万円を全国民に一律給付するとの方針も打ち出された。

前者は「なぜ7都府県に限るのか」との疑問が当初から上がっており、愛知県や京都府などが「うちも対象地域に含めてくれ」と要望していた案件である。後者も「なぜ世帯ごとに配るのか」との疑義が上がり、「対象者の選別が分かりにくい」「申請者にのみ配るというのでは、真に必要としている人に回らない恐れがある」と評判は散々だった。

いずれも世間からの批判に耐えきれず、方針返還を打ち出さざるを得なかったわけで、「これなら最初から今のやり方にしておけばよかったではないか」との糾弾は免れない。ことほど左様に安倍政権における新型コロナウィルス対策は、後手後手と錯綜が繰り返されている。

なぜこうも対策が迷走ばかりしているのか。理解するには、国のホンネを押さえておかなければならない。「とにかくなるだけ金を出したくない」。これである。

スピーディに支払わなければならないとしながらも、申請に時間のかかる30万円支給を当初決めたのは「理由」があった Photo by Getty Images

「お願いベース」の理由

元大阪府知事で弁護士の橋下徹氏が4月12日の生討論番組『日曜THEリアル!』(フジテレビ系列)に出演し、新型コロナにも適用されることとなった新型インフルエンザ等対策特別措置法(以下「特措法」)を「天下の悪法」とこき下ろした。「要請というお願いベースだから、『休業しても金銭的な補償はしませんよ』というのがこの法律の根幹」だというのだ。

 

小池百合子東京都知事らが今回の緊急事態宣言を受け、都民の「外出自粛」や各種商業施設の「営業自粛」を要請したように、この特措法のキーワードは確かに「要請」にある。これが「命令」であれば強制力は強い。出されれば従うしかない。一方、営業停止を命令されたのだから「代わりに損失は補填してくれ」とこちらも声を上げる権利が発生するわけだ。事実、欧米では多く外出禁止令が発されているが、例えばフランスでは代償として「企業に対する休業補償を強化する」など、強制と補償とはセットになっている。

しかし「要請」であれば「お願い」に過ぎず、従ったからと言って補償する義務は発生しない道理だ。この点を衝いて橋下氏は「官僚の悪知恵を詰め込んだクソ法律」と斬り捨てたわけで、まさにおっしゃる通りである。

実際にはこの国においては、首長による「お願い」は限りなく「指示」「や「命令」に近く、地方公共団体ごとに様々な救援策が打ち出されている。それでも、なのだ。それでもこれはあくまで、「お願いを聞いてくれたお礼」に過ぎず、法で規定された補償では決してない。その気になれば「金は払えんよ」との最後っ屁を温存した法律である、ということを忘れてはならないのである。

この点にも垣間見えるであろう。「とにかく国は金を払いたくない」という大前提が。