このままでは「コロナ後」も、危機的な「パンデミック」は繰り返される

世界はオルタナティブへ向かえるか
土佐 弘之 プロフィール

BBC、CNNやガーディアン紙などのレポートでも、看護師など患者に直接接触する機会の多いケア・ワーカーや出勤を余儀なくされている清掃業・運搬業・食品販売業(特にレジ係)などの従事者などの社会経済的中下層、エスニック・マイノリティの方が感染リスクが高いことが報告されている*10

加えて、ロックアウトや自粛要請の結果、そうした層の解雇・失職などの社会経済的リスクは著しく高まっており、アメリカでは高額な医療費を負担できないため罹患はほぼ死を意味することになる。

ニューヨーク(4月17日)〔PHOTO〕Gettyimages
 

この点については、マイク・デイヴィスのエッセイ「疫病の年に」*11などでも指摘されているが、ネオリベラル全盛期にコスト削減のもと医療・社会福祉のセイフティ・ネット解体が進められたところ、今回のパンデミックでとどめを刺された形になっている。加えて、今後、スペイン風邪の時と同様に、医療インフラが脆弱なアフリカなどの地域への感染拡大による甚大な被害も懸念されるところだ。

そうしたリスク分配における不平等の拡大に加えて、感染症が過剰に、国家にとっての脅威、安全保障問題とみなされる(生存をかけたゼロサム・ゲーム的な絶対的友敵関係の枠組みの中で捉えられる)ようになると、往々にして、感染者およびその属性、特に国籍、人種等の集団的属性に対する差別が引き起こされるといった問題が起きることになる。

(トランプ大統領などが実際にしているように)戦争のメタファーを防疫に動員すると、感染者に対してスティグマ(負の烙印)がおされるように、ウイルスとの「友敵関係」を介して人間社会の分断を進めていくことになる。例えば、HIV/AIDSの時も、初期段階ではゲイに対する差別、次にはアフリカ、特に南部アフリカ諸国の人びとに対する差別をもたらしたことは記憶に新しい。

今回も、アメリカのトランプ大統領やポンペオ国務長官らが、周囲の批判を振り切る形で、このウイルスを「中国ウイルス」ないしは「武漢ウイルス」と連呼して止まず、あえてアジア系移民などに対する差別を煽る姿勢をとっているのは典型的である。もともと、人種差別主義と親和性が高い右翼ポピュリズムの文脈では、感染症の安全保障問題化は自ずと人種差別主義の昂進へとつながることになる。