このままでは「コロナ後」も、危機的な「パンデミック」は繰り返される

世界はオルタナティブへ向かえるか
土佐 弘之 プロフィール

特に未知のウイルスによる感染拡大については、開発に伴う森林破壊や気候変動などによる生物多様性喪失が、病原体拡大を防ぐ緩衝機能を果たしていた種の絶滅や病原体を運ぶ宿主や媒介生物の繁殖を招来し、結果として新しいウイルスの人間社会への感染件数を増加させてといると指摘されている*7

最近でも、新しいウイルスがもたらした感染症として、エボラ出血熱、HIV/AIDS、SARS、MERS、鳥インフルエンザなどが挙げられるが、「今回の新型コロナ・ウイルスもまた、人間が生物多様性喪失など自然環境を壊していく過程で、種を超えたウイルスの変異・感染拡大にとっての格好な状況を作ってしまった結果だ」とする見方が、ガーディアン紙の記事で紹介されている*8

その記事の中でも引用されているが、環境学者のケート・ジョーンズらによれば、ここ半世紀で、森林乱伐などに伴う緩衝地帯の喪失、ブッシュ・ミート(野生動物から得る食肉)の市場取引、ウイルスの感染拡大・変異のホットスポットとなる危険性の高い過密な養鶏場・養豚場(ファクトリー・ファーム)の拡大などにより、動物由来の感染症の事例が増えてきており、そのトレンドは我々の健康、安全保障、経済、生活を大いに脅かすレベルになってきていた*9

〔PHOTO〕iStock

しかし、ネオリベラル・グローバリゼーションが生み出した格差拡大などの矛盾が累積した結果として世界を席巻していた右翼ポピュリズム(自分中心主義)などもあり、社会は国家レベルでも国際レベルでも、こうした危機に有効に対応する能力を既に喪失していたのである。

たとえば、イースター(復活祭)の頃までには新型コロナウイルスの感染拡大は収束すると3月時点では楽観的な見通しを表明していたアメリカのトランプ大統領が、1ヶ月後、結果的に感染拡大阻止に失敗したのがわかると、その責任を転嫁する形で「中国寄りで初動を誤った」とWHOを非難しWHOへの拠出金停止を表明したのは、そうしたガバナンス崩壊を象徴する一コマと言ってよい。

 

パンデミック下での差別主義の昂進

次に、現在、パンデミックによってネオリベラル・グローバリゼーションは急停止した状態になっているが、「リスク分配における不平等」という問題――誰がパンデミックによるリスクを引き受けることになるか――の構図は、パンデミック以前と、それほど変わらないどころか、むしろより悪化している点もおさえておいた方がよい。