このままでは「コロナ後」も、危機的な「パンデミック」は繰り返される

世界はオルタナティブへ向かえるか
土佐 弘之 プロフィール

未知のウイルスが人間社会に入ってくる契機を作っているのは、もちろん人間である。麻疹、天然痘、インフルエンザなど、動物起源のウイルスを人間社会に頻繁に持ち込むようになったのは、人間が野生動物を家畜化するようになってからであるし、感染拡大の環境を整えたのは定住農耕に伴う都市化と言われているように、感染症の歴史は文明史とほぼパラレルに進んできた*3

感染症の拡大は、まずユーラシア大陸の東西交易や帝国による遠征・戦争などの人の移動といったグローバリゼーション第一波を通じて引き起こされることになった。特にモンゴル帝国の拡大とそれに随伴する形でのペストのヨーロッパへの感染拡大は、ヨーロッパ全人口の約3分の1を死に追いやり、その人口激減は中世の封建制社会の危機を招き、結果としてルネサンスへの転換を促すことになった(13〜14世紀)。

14世紀に書かれたと考えるペスト患者を描いた絵画〔PHOTO〕Gettyimages
 

そして、感染症のグローバルな拡大による悲劇的帰結ということで言えば、グローバリゼーションの第二波、つまり大航海時代における「コロンブス交換」(新旧大陸間の生物大移動)に伴ってヨーロッパから持ち込まれたウイルスなどにより、アメリカ大陸の先住民の総人口の10分の9、すなわち約5000万人近くが死んだとされていることは特筆に値するであろう*4

それから約400年経った第一次世界大戦期、蒸気機関による船舶・鉄道といった近代交通システムによる、人、特に兵士の大量移動(グローバリゼーションの第三波)を媒介としたスペイン風邪の世界的大流行などの間歇的なパンデミックを経験した*5。そして21世紀の現在、グローバル・シティの拡大・過密化とともにジェット機での大量移動(グローバリゼーションの第四波)などによってウイルスがグローバルに感染拡大するための絶好の環境が整えられていた。

そこに、過剰な開発に伴う未知のウイルスの感染リスクの増大という条件が加味され、我々は新たなグローバル・パンデミックを経験している*6