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漫画界レジェンドの告白「片目は半分見えない。本を聞くのが楽しい」

ちばてつやさん特別インタビュー
石井 徹 プロフィール

片方の目が、もう、半分見えないんです

後、私は結構好きだったのは、武者小路実篤とか太宰治。自分が人間として情けないなっていうところを明け透けに書いてるんだよね。少し膨らまして書いてるのかもしれないけど。

人間って、生きていると、しょっちゅう壁にぶつかる。その壁を乗り越える時の苦しさ、それから壁を越えられなかったときの情けなさ、っていうものも、小説には書かれているから、それに勇気づけられたこともあるね。「ああ、人間って誰でもみんな苦しんで、いつもいつもよじ登ろうと足掻きながら生きてるんだなあ。挫折したときも、それはそれで人間らしくていいな」とかね。

感動したといえば、菊池寛の作品で洞窟を掘る話があったよね、そうそう『恩讐の彼方に』。あれなんか読んでいて、「こういう人間になりたいな」とか思いましたよ。若い時は、登場人物に自分を重ねて読んでました。「自分だったらどうするかな、自分はこんなに頑張れないな」とか、「だけどこういう頑張れる人間になりたいな」とかね。そういうようなことを考えながら読んでました。

――たとえ、マンガ家や表現者にならなくても、その手の作品を読んだ方が、人間を知る、相手のことを知るということにおいては、とても有益だと思うんですが。

そうねえ。私はたくさんそういうものを読んで、今の自分があるんだと思うからね。私は、目を酷使したんで、片方の目がもう半分見えないんです、網膜剥離になったりしたから。それで、本を読むのが厳しいので、最近は朗読を聞いてます。俳優さんや声優さんが昔の名作を朗読しているもの。寝る前にそれを聞いたりしています。それも読書ですよ。何も本開いて読むだけじゃなくて、いろんな形で文学を楽しめる。

日本だけじゃない、世界中に100年経っても未だに再版されるような、世界名作全集とか世界童話全集とかね、そういうものもたくさんあるんで、そういう本を選んで読むといいかな。

――それはやっぱり普遍的なテーマを扱っているということですね。

そうそう。100年200年経っても人間の本質は変わらないぞっていう。人間の素晴らしいところ、人間のダメなところ、人間だから微笑ましいところ。いろんなことが表現されてるんで、そういうものをたくさん読むと人生が豊かになるし、人に対する付き合い方も磨かれてくる。

いろんな人間がいるんですよ、社会にはね。実際に会えるのは、身近な人に限られちゃう。でも、本の中なら、いろんな人に出会える。偉人にも悪人にも。本を読むのは、そういう人とコミュニケーションするのと一緒だから。

 

「朗読」の楽しみ方

――先生も、もう傘寿を超えてらっしゃいますけれども、やっぱりそういうのを読んでいて、楽しいわけですよね。世の中のシニア世代には、一日中テレビ見ている、という人も多いようですが……。

いやいや、テレビはテレビでね、リラックスできたり、いろいろ違う楽しみがあるでしょ。確かに、本を読むっていうのは、ちょっとプレッシャーがあるかもしれないけど、さっき言ったように朗読を聞くとか。ラジオでもやってますよ、朗読の時間とかね。