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漫画界レジェンドの告白「片目は半分見えない。本を聞くのが楽しい」

ちばてつやさん特別インタビュー
石井 徹 プロフィール

日本に来るまでマンガを知らなかった

――先生の世代の漫画家さんは、皆さん読書家でしたよね。お友だちだった赤塚不二夫さんとか。先生も「あの人達、みんなそういうのを読むのが普通だったよ」っておっしゃってました。

そうだねえ。少なくとも私の友達はみんなすごい読書家だったし、それから映画をたくさん見たし、話題になる演劇があればそれも見に行ったし……。それはマンガを描くためじゃなくて、まず自分が感動するというか、楽しむために見たんですよ。自分が感動したから、それが作品に影響したんじゃないかなという風に思いますね。

――そういうものが、マンガを描くときに、その時の感情がよみがえって、作品に反映したってことは、多々あったということですか。

うーん、たぶんね。もういろいろ読んでるから、どれがどう、ということはないんだけど、子供の頃からずっと本を読んで感動したり、笑ったりしてきたからね。「ああ、人間って馬鹿だなあ」っていう所も、小説だとか童話だとか色んな所にありますよね。イソップ物語なんかは、その典型かもしれない。そういうものから刺激を受けて書いたお話もあったと思います。

――具体的に、それがストーリーや演出に影響したものってありますか。

まあ、直接参考にしたわけではないけど。そうだな、『レ・ミゼラブル』だとか――『巌窟王』ね。あとは、みんなが知ってる『宮本武蔵』、吉川英治さんの。あの本なんかも、いろいろな若者の生き方が描かれているし、キャラクターも、怪しげなおばあさんが出てきたり、お通さんみたいな魅力のある女性が出てきたり……。『あしたのジョー』描いたりするときにずいぶん、そういう武蔵の生き方みたいなのが影響していたかもしれないな。

あと、私は、子どもの頃は親が――今の親もそうかもしれないけど、「マンガを読んだらダメ!」って言ってましたから。だから子供の頃はマンガ全然見てないんだよ。家の本棚にも、絵本とか小説はあったけども、マンガは一冊もなかったの。

 

日本に帰って来て、8歳か9歳くらいになってね、初めて漫画に出会った。道端に落ちてる豆本みたいなのを拾って読んだのが最初。当時、キャラメルか何かのおまけについてくる小さな豆本があったんですけどね。それまで私はマンガを知らなかった。まあ、それが良かったのかもしれない。