最も不安なのは、「見えない感染妊婦」

すでに、実際に陽性の妊婦が入院しているある病院の産科医に様子を聞いてみた。
産婦人科医は、感染病棟を訪問し、防護服などで厳重に感染予防をした上で、妊娠が順調に経過しているかどうかを診ているという。胎児心音を聞く機器や超音波検査の装置は、それぞれ一台を感染病棟の専用機と決め、産科病棟では使わないようにした。息苦しいN95マスクをつけ、防護服を再利用しながら着て、それでも感染するかもしれない未知のウイルスに立ち向かいながら感染病棟に訪問し、陽性妊婦の、妊婦としての安心、胎児や新生児の安全を守ってくれる病院には心から感謝したい。

産める場所が倒れないためには、妊婦の感染者を少しでも減らすことだ。
実は一番心配なのは、陽性妊婦が病院に来ることより、感染したけれど無症状・無検査の妊婦が来ること。本人にもわからないまま院内に感染を広げてしまうリスクがある。

「我々医療者は、むしろ、陽性とはっきりわかった人については、一定の安心感があります」と前出の関沢さんは言う。
「その対応方法を、プロフェッショナルとして学んでいるからです。しかし、新型コロナウイルス感染症は、誰が感染者かわかりません。一般的に、院内感染の7割は、患者さんが持ち込んでいると言われています」
ところが今、感染を疑われる人にさえ、迅速にPCR検査ができないこともあるのだから何とももどかしい。

感染リスクの高い職場に、
通勤し続ける妊婦たち

さしあたり、妊婦側としては、少しでも家から出ないようにして感染リスクを下げ、自分も、赤ちゃんも、そして産み場所も守りたいものだ。

ところが冒頭のアンケート「今、妊婦さんは何に困っている? 新型コロナウイルス感染症アンケート」では、産休・休職中ではない働く妊婦731名中、在宅勤務者は205名(28%)に過ぎず、約6割の妊婦(424名、58.0%)が「感染リスクの高い職場環境が心配」と回答した。

感染予防を人一倍すべきことは百も承知だし、注意事項をすべて実践したいが、実際にはできない立場の妊婦が膨大にいる。妊婦の間では「妊婦は特に重症化しやすいわけではない」という情報が「妊婦は他の人と同じ」という意味に受け取られ、職場や社会の理解を得られないという声も多い。

しかし、重症化しやすいわけではなくても、妊婦が他の人と同じだというのは大きな間違いだ。新型コロナウイルス感染症の罹患率が同じであろうとなかろうと、妊婦が感染したら、妊婦であるというだけで自分にも、医療にも負担が大きく、こんなに大変なのだ

きちんと出産ができるよう、産科医療現場も全力を尽くしている。周囲も力を合わせ、元気な赤ちゃんが生まれてくるためにみんなで出産を守っていきたい 写真提供/高橋さおり


(この記事は2020年4月18日の時点での情報に基づいています。最新の情報もご確認ください)