『パラサイト』はなぜ映画史上の奇跡なのか?「水」が持つ大きな意味

格差映画はいかにして育ったのか
大島 育宙 プロフィール

水、洗濯物、切り干し大根…

『パラサイト』のファーストカットとラストカット、いずれも半地下の窓越しに外を映し、手前に洗濯物の靴下がぶら下がる。驚くべきことにポンの長編初監督作品『ほえる犬は噛まない』の最初のカットも、窓越しに外を映すショットで、手前に洗濯物がぶら下がっている。

格差を物理的な構図で見せたという以外に『パラサイト』と共通項がなさそうな『スノーピアサー』も最初のカットは荒涼たる凍った景色の手前側に「SAVE THE PLANET」というオーナメントが映る、よく似たカットだ。

次のシーンは屋上で、主人公の男の背後で老婆が切った大根を並べ始める。そう、彼女が作ろうとしているのは『パラサイト』で臭いの比喩として一度選ばれた、切り干し大根である。その臭いが『パラサイト』でカタストロフの引き金になる。

ポン・ジュノ監督作品の一部

水と同様、ぶら下がる洗濯物や切り干し大根がポン監督にとって個人的にどんな意味を持つのか。そうした細部と細部に挟まれた襞に我々の思考は深く吸い込まれていく。中毒性が高いポン・ジュノ映画の中でも、本作のリピーター率は群を抜いていた。

社会問題を必ず作品に反映し、個人的な具象を必ず作品に詰め込んできたポン・ジュノが、その最先端と最先端の掛け算として弾き出したのが『パラサイト 半地下の家族』である。映画史上、類を見ない奇跡的な傑作だ。

 
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