この長期化に耐えられる企業はどのくらいあるのだろうか。
NHK「クローズアップ現代+」に出演したマネックス証券のチーフアナリストの大槻奈那氏は、中小・零細企業の資金繰りについて厳しい見通しを示している。
大槻氏の調べでは、資本金1000万円未満の企業では、全産業でも通常時に必要な支出の2.4ヵ月分の現預金しか残されていないのが現状だ。製造業では2.5ヵ月、飲食・サービス業で2.1ヵ月、小売業で1.5か月、宿泊業に至っては1.1ヵ月というから、事態は緊急を要している。
「中小企業は全国に380万社、従業員は3000万人。雇用維持のためには早急な手当てが必要だ」と大槻氏は言う。
実際にリーマンショック時には1年で95万人も就業者数が減少し、完全失業率は5.5%に達した。有効求人倍率がリーマン前の水準までもどるのに5~6年かかっている。
特に大手も含めてコロナショックの直撃を受けている小売やサービス業では派遣社員やアルバイトの比率が高く、あの「ハケン切り」の悪夢の再来に悩まされている人、あるいはすでに現実となっている人も少なくないだろう。
その災禍は学生たちにも容赦なく降りかかる。リーマンショック以降、大学生の仕送り額は年々、減少しており、多くの学生はアルバイトして生活費を賄っている。いまの外出自粛要請が深刻な影響をもたらす可能性もあるわけだ。
エコノミストの田代秀敏氏が言う。
「中小・零細企業の倒産が相次げば、学生のアルバイト先も無くなり、大学を退学したり、進学をあきらめる人も出始めるかもしれません。そうなれば、たとえコロナの流行が沈静化しても、サービス産業やコンビニなどでは、優秀な労働力を大量に失うことになり、深刻な人手不足に陥りかねない。
現在、政府は金融機関に積極的な貸し出しを要請していますが、こうした貸し付けがたとえ不良債権化したとしても、国が何らかの手立てを講じることを事前に金融機関に示唆すべきです。リーマンショックの際に起こったような貸し渋り、貸しはがしを防止しなければなりません」