傑作ドラマ『岸辺のアルバム』を手掛けた、堀川とんこう氏の死を悼む

グッドバイ・ママ、あこがれ共同隊も…
高堀 冬彦 プロフィール

「不良少年の更生」

1981年の連続ドラマ『茜さんのお弁当』(水曜午後9時)は知る人ぞ知る名作。おっとりした性格の茜(八千草薫さん)が営む弁当屋が舞台で、4人のツッパリ少年が働き始めるところから物語は始まった。

当初は強面で乱暴な4人に茜は振りまわされるばかり。だが、やがて彼らの純粋な心情に理解を示し、愛情を振り注ぐ。4人には裏表がなく、邪心というものがなかった。
一方で4人も自分たちを信じてくれた茜のために、懸命に働き始める。茜が窮地に立たされると、体を張って守った。

八千草薫さんは2019年10月24日に逝去された。堀川氏は追悼で「世の男性にとって、永遠の初恋の人と呼べる存在だった」と述べている photo by gettyimages

当時、堀川さんはこのドラマのテーマを「不良少年の更生」と語った。愛情さえ注がれれば不良少年たちにも無限の可能性があるというメッセージが込められていた。

時代背景がある。1970年代後半から80年代前半は校内暴力の嵐が吹き荒れ、同時に80年代前半は少年非行の戦後第3のピークだった。不良少年と呼ばれる未成年が多かった。とはいえ、その理由は少年たちと家庭にだけ存在したわけでなく、学校教育にもあったと見るべきだろう。

大学進学率の高まりと軌を一にして、中学の教師たちは進学校を希望する生徒向けの授業に熱を入れていた。職業高への進学希望者は軽視された。高校へ進学しない生徒はほとんど気にも留められなかった。これでは子供たちの鬱憤がたまらないほうがおかしい。堀川氏は世間から煙たがられていたツッパリ少年たちの言い分を代弁し、彼らの愛すべき面を描出した。

 

どのドラマも堀川氏の思いに基づいてつくられた。視聴者に迎合しなかった。

「視聴者の見たがるものばかり追うと、テレビドラマの幅がどんどん狭くなる」(1997年5月21日付、読売新聞東京本社版夕刊)

その結果、見る側の脳裏に焼き付く名作の数々が残された。