傑作ドラマ『岸辺のアルバム』を手掛けた、堀川とんこう氏の死を悼む

グッドバイ・ママ、あこがれ共同隊も…
高堀 冬彦 プロフィール

悲しい曲と、悲しい物語

連続ドラマ『グッドバイ・ママ』(木曜9時)は1976年に放送された。主演は故・坂口良子さんで、主題歌はジャニス・イアンの『ラブ・イズ・ブラインド〜恋は盲目〜』。ジャニスの魅力を日本で広めたのは堀川氏にほかならない。まだ日本での知名度が低かったが、堀川氏が惚れ込み、採用を決めた。結果、放送中にオリコン洋楽シングルチャートでトップになり、それが8週続いた。

悲しい曲だった。物語もそう。ヒロインのあざみ(坂口さん)は交通事故死した愛人との間に生まれた2歳の娘を懸命に育てていた。ところが、再生不良性貧血と診断され、余命1年と宣告されてしまう。

TBSチャンネルより

あざみは狼狽し、2歳の娘のために父親探しを始める。病を隠し、結婚相手を見つけようとした。娘の幸せな未来を一途に願うシングルマザーの物語だった。

堀川さんは報道記者を志望してTBSに入った。そのせいか、「ヘソの緒は社会派」と言い続けた。このドラマもそうで、「シングルマザーが亡くなったら、子供はどうなる」「愛した人が死んだら、その子供も愛せるか」という重いメッセージを見る側に突き付けた。

最終回。あざみは娘の3歳のバースデー用にケーキを買う。降りしきる雨の中、自宅へ向かうが、もう少しというところで倒れてしまい、そのまま誰にも看取らずに息絶えた。娘は帰るはずもない母を待ち続ける。

 

せめてもの救いは、娘の父親を事故死させた男(渡辺篤史、72)が、やさしい目をして娘を迎えに来たこと。大切に育ててくれるに違いない。そう見る側に暗示した。故・市川森一さんの脚本だった。