新型コロナウイルス対策、政府はどこまで「自由」を制限できるのか

「公衆衛生」の倫理
児玉 聡 プロフィール

ロックダウンはやりすぎか

さて、今回のCOVID-19に対する感染症対策では、中国やヨーロッパ諸国を始め、世界中で政府による罰則付きのロックダウンが発令されている。都市封鎖や国家的な外出禁止令のようなロックダウンは、感染している者や感染の可能性のある者を含め、すべての市民の自由を大きく制限するものであり、これまで公衆衛生倫理では最終手段(ラスト・リゾート)と位置付けられてきた。COVID-19の致死率は比較的低いと当初から言われていたのに、なぜこれほどまでに自由の制限がなされるのか。

厳しいロックダウンで人通りが少なくなったパリ市街〔PHOTO〕Gettyimages

それは、今回の感染症に二つの特徴があるためだろう。一つは、感染していても症状が軽いかほとんどない人が一定数いることであり、もう一つは、高齢者や基礎疾患のある者以外は重症化しにくいという情報が出ていることである。

感染した場合に他人または自分が認識できる明確な症状が出るような感染症の場合は、水際対策や感染者の隔離などの通常の対策が有効であるが、今回はそうではない。また、誰でも重症化の恐れがあれば自分の利益のためにも感染症になることを避けたいと思うだろうが、やはり今回はそうではないため、多くの者にとっては感染症を避けようとする動機が弱くなる。

このような特徴があるため、感染者の隔離を中心とする通常の感染症対策では感染を止められず、結果として感染者数が一気に増大している。サイレントエピデミックという言葉も出ているが、主に症状がないか軽い人たちから社会全体に感染が広がって、深刻さに気付いた時にはすでに時遅しという展開が多くの国で起きている。

致死率50%とされるエボラ出血熱や、致死率10%とされるSARSなどと比べた場合、COVID-19の致死率は現状では1%弱から数%程度と考えられており、決して高くはない。しかし、当然ながら、感染者数が多ければ多いほど、致死率が低くても死者は増える。

また、患者が一気に増えると医療機関が対応できず、通常であれば死ななかった患者も十分な医療を受けられずに死んでしまう可能性が高まる。爆発的な感染者数の増大を防ぐために、ロックダウンのような対策が多くの国で取られているのは、このような事情があるからだと考えられる。