悲しみに打ちひしがれ不安に苛まれる。たとえいまが真っ暗闇でも、明けない夜などありはしない。苦境のときほど凛と前を向く。彼女の歌はそんな力を与えてくれる。発売中の『週刊現代』が特集する。
「いま、新型コロナのせいで日本中が落ち込み、誰もが下を向いています。そんなときだからこそ、中島みゆきさんの『時代』('75年)が強く胸に響きます。
『だから今日はくよくよしないで 今日の風に吹かれましょう』。本当に、その通りです。思えば彼女の歌は、人生の節目節目で僕の背中を押してくれました」
そう語るのは、振付師のラッキィ池田氏だ。
真っ暗な暗闇を、光もなくさまよう。そんな苦しい日々も、いつかは終わりが訪れる。
中島みゆきの歌を聴くたび、日本人は勇気づけられてきた。
「初めて『時代』を聴いたのは、中学生の頃。僕の家は裕福ではなかったので、勉強部屋もありませんでした。家族が寝静まってから、夜中に受験勉強をする毎日です。
家に一台きりの、小さなラジオ。それが僕の『友人』でした。そんなある日、『コッキーポップ』(ニッポン放送)という音楽番組から流れてきたのが『時代』だったんです。
あの頃の僕は、思春期の葛藤で揺れ動いていました。それまでずっと一緒だった友人たちとも受験で離れ離れになってしまう。
『少しでもいい学校に行かないと、世の中から振り落とされる』という価値観にも馴染めなかった。自分は一体なにがしたいのか、どう生きていけばいいのか。途方に暮れていました。
『そんな時代もあったねと いつか話せる日がくるわ』。あの言葉に出会った瞬間、自分の存在を肯定された気がしました。ラジオから流れてきた声が、僕の心に突き刺さったのです」