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消防士を炎の熱から守る伝熱工学「ナノ粒子でのふく射熱制御」の秘密

火災現場の「減災」実現へ共同研究進展
私たちが太陽の光やたき火を暖かいと感じるのは、その光や炎からの「ふく射熱(輻射熱)」によるもの。ならば、そのふく射熱を制御できれば、危険な火災現場でも消防士が安全に活動できるのではないか──。

伝熱工学が専門の山形大学・江目宏樹助教が取り組む「ナノ粒子を使って熱が伝わる現象を制御する」研究は、2018年度の日本機械学会奨励賞を受賞。火災現場で炎の熱を遮る技術への応用が期待され、2019年度の総務省消防庁の新規課題としても採択された。

現在は消防活動の支援を模索し、各方面との連携、共同研究を進めている。

スタートは「冷たい黒」の研究

「黒い色=熱い」というイメージがあるのは、黒が太陽の光を吸収するから。

太陽の光には目に見える「可視光」と、エネルギーの半分以上を占める目に見えない「近赤外光」がある。この目に見えない近赤外光だけを反射し、可視光の吸収をそのままにできれば、「冷たい黒(クールブラック)」を実現することになる。

熱くならない「冷たい黒」

伝熱工学を専門とする江目先生は、こうした研究に大学院生時代から取り組んできた。

 

そのメカニズムは、ナノマイクロスケールにおいて粒子の散乱現象を制御することで、塗料の反射性能をコントロールするというもの。山形大学着任後も研究を継続し、ナノマイクロ粒子というミクロな現象を制御することで、住宅や車の冷房負荷を軽減するなど、環境問題に貢献することを目指している。

さらに、この研究の発展形として、ナノマイクロ水粒子を用いて火災現場等におけるふく射熱を遮断する研究「ふく射熱遮断スプリンクラーの開発」が、2019年度の総務省消防庁の消防防災研究助成の新規課題として採択された。

火災現場において火炎から放射されるふく射熱を遮断するために、最適な水粒子の層を形成することのできるスプリンクラーの設計指針の構築を目指すというもの。

現在、江目研究室を中心に東北大学、置賜広域行政事務組合消防本部、八戸工業高等専門学校との共同研究として進められている。

左は冷たい黒で、右が一般的な黒。同じ条件下で赤外線で見てみると、冷たい黒のほうが温度が低いことがわかる。可視光の吸収はそのままに、近赤外光だけを反射することで冷たい黒が実現している

マイクロ水粒子で消防士も消防車も守る

実際の火災現場では、ふく射熱の影響で消防車の車体が変形してしまうこともあるため、ふく射熱対策は大変重要な課題とされている。