新型コロナウイルスの影響で、人々の不安や恐怖が増し、分断や孤立が進んでいる。
他人との接触をできるだけ避けて距離を置き、仕事は可能な限り家で済ます。そのような暮らしの傾向は、我々がこのウイルスを克服した後も、ある程度続くのではないだろうか。
人は人との関係で傷つくが、人との関係で癒されもする。そうした密な人間関係が希薄になった時、私たちの心に寄り添ってくれるものは何なのか。有望な候補となりうるのがAI(人工知能)だ。
2020年3月、AIを活用したチャットボットサービス「こころコンディショナー」の試作版が、インターネットで無料公開された。精神科医や公認心理師らが行う認知行動療法の手法を使い、AIが利用者と対話するサービスで、認知行動療法の権威として知られる精神科医の大野裕さんが、メディア関連の企業と開発を進めてきた。
認知行動療法は、ストレスを感じた時に表れる極端な考えや行動を修正することで、気持ちを軽くするカウンセリング法だ。精神疾患の治療法として開発され、うつ病などへの有効性が確認されてきた。さらに、日々のストレスへの対処法としても効果があることがわかり、職場や教育現場など様々な領域で活用され始めた。
このサービスを、スマホで早速試してみた。ただし、テストのための試作版なので、完成時には大きな変更が加えられたり、大幅に進化したりする可能性はある。
まずは、AIに名前(匿名でもいい。私はSATOと記入)、年齢(年代)、性別を記入して伝える。すると、こんな質問が投げかけられる。
「では、さっそく始めましょう。今日はどうされましたか?」
ここで、画面にふたつの選択肢が表示される。AIの質問に答えながら気持ちを整理する「相談」か、言いたいことを好きなだけ書き込む「チャット」のどちらかを選ぶのだ。今回は「相談」を選んで進むことにする。