いまこそ、地球科学最大の古典『大陸と海洋の起源』を読もう!

地球科学の幕開けとなった画期的古典
このたびブルーバックスから復刊された『大陸と海洋の起源』は、地球科学の歴史を語るうえで欠かすことのできない画期的な名著です。

すばらしい着想、思いがけない挫折及び劇的な復活という大陸移動説の物語は、科学史的にみてもたいへんに興味深いものである”

と訳者の竹内均博士も述べられているように、本書は現代の読者にとっても読む価値のある一冊です。

復刊を記念して、「訳者はしがき」およびウェゲナーによる「序文」を特別公開いたします。

非常事態の今だからこそ、心を落ち着かせて、古典にじっくりと向き合ってみるのはいかがでしょうか?

訳者はしがき ──「大陸移動説」の最終版

本書はウェゲナー(A. Wegener)による「大陸と海洋の起源」(Die Entstehung der Kontinente und Ozeane, Vieweg und Sohn, 1929)の第四版すなわち最終版の訳である。

仲瀬善太郎さんによるこの本の第三版の訳が、一九二八年(昭和三年)に岩波書店から出版されている。しかし、大陸の移動を主張したウェゲナーのこの本は、版を改めるごとにまったく書き直されている。したがって、私の手になるこの第四版の訳は、第三版とは異るまったく新しい本の訳といってよいものである。

【写真】アルフレッド・ウェゲナー
  アルフレッド・ウェゲナー photo by gettyimages

ウェゲナーは一九三〇年に亡くなっている。亡くなる前年に出版した、この大陸移動説に関する最終版で彼が主張したことは、その本質において正しかった

しかし歴史は曲折した道をたどった。ちょうどこの頃から、大陸移動説は不評判となった。そして海底地質学や古地磁気学からの新しい証拠によって一九五〇年代のはじめにそれがよみがえるまで、大陸移動説は長い暗黒時代を経験しなければならなかったのである。

しかし、現在では大陸移動説は、ウェゲナーが予想もしなかった程度にまで発展しており、大陸移動の考えを抜きにして地球科学を論じるわけにはいかない。すばらしい着想、思いがけない挫折及び劇的な復活という大陸移動説の物語は、科学史的にみてもたいへんに興味深いものである。

一〇年ほど前から、私は大陸移動説と移動説以後の地球科学の進歩をわが国に紹介する仕事を続けてきた。その私の頭を常に去らなかったのは、いつの日にかこのウェゲナーの「大陸移動説」の最終版を翻訳して、これを広くわが国に紹介したいということであった。ウェゲナーに対する一種の責任のようなものを、私は感じ続けてきたのである。

講談社のはからいで、いまその責任を果たす機会を得て、私はたいへんうれしく思っている。

  一九七五年 春

竹内 均