フランスに暮らして10年、教師をしているフランス人の夫との間に二人の子どもがいる私は、3週間一歩も外出していない暮らしをしていた。そんな中、4月7日に発熱し、胸が苦しくなってリモート診療を受けると、新型コロナの検査を受けてほしいと主治医に言われたのだ。不安の中、自宅隔離措置を取ったが、翌日の検査を待っている時にさらに胸が痛くなり、深夜に救急車を呼ぶことになった。

救急車を呼んだ段階の電話で「あなたのその症状は新型コロナではないけれど、検査をした方がいい」と言われ、私はフランスの「医療現場」を目の当たりにする。医療従事者たちの生の声を聞き、そしていま外出自粛をしている私たちにふりかかる新型コロナの様々な影響を痛感したのだ。

13日にはマクロン大統領が外出禁止の期限をさらに4週間延期することを宣言した。ノートルダム寺院の再建工事もストップしている Photo by Getty Images

外出自粛3週間後に「救急車で外出」

救急車を待つ時間はいつもより長く感じられた。マスクをして使い捨て手袋をつけ、救急病院のベッドが寒いことを知っていたので厚めのコートを着込んだ。15分後、家の前で青くピカピカと光りが放たれ、救急隊員が到着した気配を感じた。家族のものも含め、これでフランスの救急車に乗るのは3回目だ。救急病院には数えきれないほどお世話になってきた。1人で大丈夫だ。子供たちが寝静まっている午前2時過ぎ、私はもう会えなくなるかもしれない夫に別れを告げ、アパートの階段を降りて外へ出た。

1人で歩いてきた私を見て、救急隊員は驚いたような表情を見せた。子供たちを起こしてまで夫の運転で病院へ行けないため、歩ける体なのに救急車を利用させてもらうことを申し訳なく思った。

救急隊員は伝達書類の上にマスクを一枚用意していた。私がマスクをしていなかったら、渡す手はずのようだ。
恐る恐る救急車の中を覗くと、以前とは違って漂白剤のキツイ匂いがした。新型コロナの影響で徹底して消毒をしている様子に安心して中へ進む。

今回の行き先は息子を出産した病院だと分かり少し安心したが、多数新型コロナ感染者が運ばれている別の病院同様、すでに犠牲者が出ていることに変わりない。どちらにしろ<フランスの新型コロナ感染震源地>の一つである「病院」へ向かうことに変わりはなく、感染への不安と失望感は変わらなかった。起きた体勢で呼吸は落ち着いていたので、救急車に揺られながらベテラン隊員に一方的に質問をさせてもらった。