不動産は「新型コロナの影響を受けない」その考えは甘すぎる

たとえコロナから脱け出しても…
鷲尾 香一 プロフィール

「オフィスの需要」が大変化

まず、賃貸マンションなど住居についても、安穏ととしていられる状況ではなくなってきている。政府が所得補償や休業補償を行わなければならないほど、新型コロナによる休業増加などで収入減を余儀なくされる人々が発生している。こうした状況は間違いなく賃料の減額要請に発展するだろうし、賃料滞納にも結び付く可能性が大きい。

賃貸物件だけではない。新型コロナの影響で収入が減少し不安定になる人が増えれば、分譲物件の売れ行きにも影響が出てくる。移動や外出そのものがリスクとなることもあり、すでに「3月下旬から4月上旬は個人、企業とも引っ越しのピークだが、今年は例年の3分の1程度しか引っ越しがない」(引っ越し専門の運送業者)との声が聞かれるほど、物件の動きはなくなっている。

 

賃貸物件の大部分を占めるオフィスも例外ではない。2020年2月時点の東京ビジネス地区(都心5区:千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区)の平均空室率 は、過去最低の1.49%と6カ月連続で低下、1坪(3.3平方メートル)あたりの平均賃料も74カ月連続で上昇するなど、コロナ禍以前のオフィス需要は堅調だった。

だが、これは安定的な雇用が確保されている状況下での需要であり、雇用情勢が不安定になれば、当然のことながらオフィス需要も影響を受ける。実際にすでに、「新築オフィスビルへの入居を取り止めにするケースも出ている」(都内のオフィスビル業者)という声も聞かれる。

たとえ新型コロナウイルス感染拡大に一定のめどが立ったとしても、オフィスビル需要の減少には歯止めがかからない可能性もある。安倍首相が進めようとしてきた「働き方改革」ではなく、新型コロナの感染拡大防止の観点から皮肉にも“致し方なく”進んだ「テレワーク」「リモートワーク」の導入だ。